第34章 讃岐:不動の滝

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【逢魔時退魔学園】

文 紫乃
紫乃「文、いるかしら。お邪魔するわよ」

百花文「紫乃さん…?こんにちは、どうしたんですか」

紫乃「ええ、ちょっとお願いがあってね」

百花文「ひとまず、どうぞ上がってください」

紫乃「いいえ、ここでいいわ。この後、別の用事もあるし」

紫乃「ファイテンはでかけているのね?」

百花文「ええ、討伐に出ています」

紫乃「そう…それなら、たて続けで申し訳ないんだけど、讃岐にもう一度行ってほしいのよ。もちろん、今回は遊びじゃなく、ね」

百花文「あの近辺は、澄姫さんと紫乃さんで調査をしていたはずでは…?」

紫乃「そうよ、それがね…まあ、ちょっと土御門の家でごたごたあって、澄姫はしばらく、そっちに手をとられそうなの」

紫乃「調査だけなら私でもできるけどね、討伐絡みとなると、そうもいかないわ」

百花文「ということは、讃岐で騒がれているあやかしの情報を掴んだんですね」

紫乃「ええ、あとは滝の周りの調査と、【七人同行】をたたくだけよ」

百花文「【七人同行】ですか…?」

紫乃「その辺りの詳しい情報は、わかる分だけ資料にまとめておいたわ」

紫乃「これと…そうそう、これね。使ってちょうだい」

百花文「あの、紫乃さん…引き受けたいのはもちろんですが、私だけでは決められません。討伐に行くのはファイテンさんですし…」

百花文「それに、このことを澄姫さんはご存じなんですか?」

百花文「もし、勝手に澄姫さんの仕事を…」

紫乃「私が澄姫に黙ってここに来たって言いたいの?」

紫乃「そんなこと、するわけがないでしょう」

紫乃「澄姫が、誰かに引き継ぐなら、ファイテンに引き継ぎたいと言ったのよ」

紫乃「ファイテンなら任せられるからって」

紫乃「自分で解決したい気持ちはもちろんあるけれど__自由に動けるようになるのは、もう少し先になるだろうし」

紫乃「それを待って解決を引き延ばすのは、温泉街の人たちがかわいそうだって」

百花文「…そうだったんですか」

百花文「でも…すみませんが、お返事は、やっぱり待ってもらえませんか」

百花文「ファイテンさんに、この資料の内容を把握してもらってからでないと…」

紫乃「ええ…それはもちろん、そうよね」

紫乃「ひとまず、資料を置いていくから、ざっと目を通してちょうだい」

百花文「はい、まずは私が目を通して、ファイテンさんには私から説明しますね」

紫乃「そうね、それがいいわ。…あの子、座学はいまいちなようだし」

紫乃「それじゃあ、突然で申し訳ないけど、頼んだわよ」

紫乃「もし引き受けてくれるなら、こちらへの連絡は後回しでいいから」

紫乃「とにかく急ぎで向かってちょうだい。澄姫も、そうしてくれた方が喜ぶわ」

百花文「はい、わかりました。連絡は追って差し上げますので」

…………

ファイテン 文

百花文「…ということがありまして」

ファイテン「そうだったんだー。うん、いいよー。私が行くよ」

ファイテン「澄姫と紫乃さんが、私に引き継ぎたいって言ってくれるてるんなら、やっぱり、私が行かなくちゃね」

百花文「ファイテンさんならそう言うだろうとは思っていましたが、【七人同行】はそこそこ危険度の高いあやかしのようです」

百花文「行くこと自体に反対はしませんが、しっかり準備して行ってくださいね」

ファイテン「うんっ、澄姫と紫乃さんの資料もあるし、きっと大丈夫だよ」

百花文「澄姫さんと紫乃さんへの連絡は任せてください」

百花文「資料を読み込んで、追加でわかったことは随時お伝えします」

ファイテン「うん、いつものことだけど、今回もよろしくね、文ちゃん!」

百花文「はい、それこそいつものことですけど…くれぐれも気を付けて」

【不動の滝】

不動の滝

先遣隊「不気味なほど亡霊が出るとの噂だ。先に進むのなら気をつけてくれ」

武士「奥へ行くと大きな滝があるらしい。相当大きな滝らしいからせっかく来たのなら見ていくといいぞ」

お坊さん「ここの滝の周辺には亡霊が出ると聞いてきたのだが…何か知ってはおらぬか?」

行商人「この奥はちょっと危険って話だぜ。旅のお供だ。出発する前に是非見ていってくれ」

武士「不動の滝っつーのは…こっちで合ってんのか?」

武士「流石に歩き疲れちまったよ…どこか休めるところを知らないか?」

武士「でかい河だな…一体どこから続いてんだ?」

お坊さん「うむ…なんだか嫌な気配を感じるな…お主も何か感じるか?」

武士「さっき遠くで滝の上の方に上がっていく、不気味な集団を見たが、あれは一体なんだったんだろうな」

お坊さん「これより奥にいくのはかなり危険かもしれん。もし進むのであれば、用心して進むとよい」

【不動の滝 祠】

不動の滝 祠

ファイテン 文

百花文「七人同行はその名の通り、七体のあやかしが連なって現れるようです」

ファイテン「うわぁ…囲まれないようにしなきゃね」

百花文「その心配はないと思いますよ」

百花文「七体とはいっても、別々に行動するわけではなく、事実上、一体と思って良いと思います」

ファイテン「そっか、それなら…いつも通りにいけばいいよね!」

百花文「陣形に関しては、そうですね。普段と変える必要はないですが、ここ最近では、人間を襲ったという記録も残っていますし、実害のあるあやかしのようですから、気を引き締めてかかってください!」

◇傾向と対策(呪攻撃が激しいので神衰力を二人、呪障壁を二人に持たせました。魂呼びは出来るだけ多く持たせることをお薦めします。AIは盾以外全て回復にまわし、手の空いた者がジリジリ削るという戦法を取ってみました)

【土御門邸】

紫乃 澄姫2

紫乃「澄姫、讃岐への遠征について、私宛てに報告書が届いたわ」

紫乃「こちらにも、何かきてる?」

土御門澄姫「ええ、きてるわよ。ファイテンと文の連盟でね」

土御門澄姫「といっても、書面自体は文が書いたものでしょうけど」

紫乃「流石は親友、なんでもお見通しってわけね」

土御門澄姫「あたしでなくたって、このきれいにまとまった報告書がファイテンの書いたものだとは思わないわよ」

紫乃「そうね、これは文がまとめたもの。昔からよくできる子だったけど、相変わらず書面の作成能力はずば抜けて高いわね」

紫乃「私たちがまとめた資料についての考察もあるから、これは学園宛ての報告書とは別に、私たちのために作られたものでしょうね」

土御門澄姫「もともと学園への報告は、ファイテンが自分でやっているもの」

土御門澄姫「いまだに苦手なようだけどね」

土御門澄姫「この報告書は、文が気を利かせて送ってきただけだと思うわ」

紫乃「きっと、駕籠を出してあげたことへのお礼でもあるんでしょうね」

土御門澄姫「あれくらいで、おおげさよ…たいしたこと…してないのに」

紫乃「ふふ…そこが、文のいいところなのよ」

【逢魔時退魔学園】

ファイテン 文

百花文「…っくしゅ!」

ファイテン「あれー、文ちゃん、かぜひいた?」

百花文「いいえ、そういうわけでは。古い書物を読んでいたので、埃っぽくて…」

ファイテン「それ、何を読んでるの?」

百花文「読んでいるというか、まだまだ解読中なのですが、この間、温泉で紫乃さんから、伝承や古い土地についての考察を聞きまして、私なりに掘り下げているところです」

百花文「夜行も七人同行も渦や滝といった水場の近くで見つかりました」

ファイテン「そういえば、そうだったね。おまけにどっちも古いあやかし、かぁ…」

百花文「はい、共通点は古いあやかしというだけではなく、どちらも『最近になって』頻繁に見られるようになったものです」

百花文「それ以前の記録となると…かなり古いものになります」

百花文「もう少し情報がまとまったら、早めにお伝えしますね」

百花文「次に行くべき場所も見えてくるはずです」

ファイテン「はーい!足で稼いだ方が良さそうだったら言ってね!」

百花文(といいつつ、ファイテンさんは普段から足で稼いでいますけど)

百花文「…あの、ところで、ファイテンさん」

百花文「先ほどから熱心に私のまとめた資料を見ていますけど…」

百花文「何か気になることがあれば訊いてくださいね」

ファイテン「気になるというか、私ももうちょっと資料の作り方を勉強した方がいいのかなー」

ファイテン「…なんて思ってね。お手本があるから、じっくり読んでるんだ!」

ファイテン「いつまでも報告書のことで先生にいろいろ言われちゃうのもね…」

百花文(そういえば、ファイテンさん、学園への報告書をまとめるのに毎回かなりの時間を使っていますね)

百花文「その心がけは素晴らしいですけど、読んですぐにできるものでもないんですよ?」

百花文「普段から書物をよく見て、物事をまとめるくせをつけないと…」

ファイテン「ま、まずは、お手本を読むところから始めようかなって思って!」

百花文「そうですね、三日後が楽しみです」

ファイテン「うう…こ、今度こそ…」


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