第25章 三河沿岸漁港

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【逢魔時退魔学園】

ファイテン 三善

三善先生「あの地方のかくりよの門も順調に閉じているようだな」

ファイテン「はいっ。まだまだ力をつけながら、ですけどね」

三善先生「お前の陰陽師としての腕は既に私を越えたかもしれん」

三善先生「ここから先、遠征地に関する情報も、徐々に少なくなっていくだろう。少し、寂しい気もするな」

ファイテン「いえ、あの・・・」

三善先生「ふふ・・・そんな顔をするな。嬉しい気持ちの方が強いのだ」

三善先生「元より、かくりよの大門へ至れる陰陽師を育てるために私は自らの歩みを止め、この道を選んだのだ」

三善先生「喜びこそすれ、感傷で歩みを鈍らせたくはないぞ?」

ファイテン「でも、三善先生にはまだ教わりたいことが・・・」

三善先生「当たり前だ。単純な腕以外にお前は危なっかしすぎる。まだまだ言いたいこともあるし、教えたいことも残っているからな」

ファイテン「は、はいっ!」

三善先生「・・・前置きが長くなったな。新たなかくりよの門が開いたそうだ。土御門は既に門を閉じたそうだが・・・今回はお前の番と言うことだな」

ファイテン「少しずつ、澄姫に近づいて行っているんですね・・・」

三善先生「ああ、そうだな。【三河国】に向かってくれ。かくりよの門が開いたのは【三河三島】だが、その前に【沿岸漁港】で三島に向かうための準備をする必要がある」

ファイテン「準備、ですか・・・?」

三善先生「三河湾の三島へ渡るには、お前の操船では無理がある。地元で船をだしてもらう必要があるのだが、折悪く、海に現れるあやかしのせいで船が出せない状況となってしまった」

三善先生「このあやかしはお前の【門】と同時に確認されたそうだ」

三善先生「急いでいるだろうが、三島に安全に渡る為にも、そして、漁村を救うためにも、まずはあやかしを討伐して欲しい」

ファイテン「大丈夫です!急いではいますけど、今は澄姫の背中が見えていますから」

ファイテン「着実に、一歩ずつ・・・行ってきますね!」

三善先生「あっ!おい、待て!まだ情報を・・・」

・・・・・・

三善先生「本当に、まだまだ危なっかしいわね。あのこは」

【三河国 沿岸漁村】

三河沿岸漁港

百花文(まずはこの漁村に現れたあやかしの討伐からですね)

ファイテン「そうだね。文ちゃんは、先生から話を聞いたんだっけ?」

百花文(誰かさんがあやかしの情報を聞く前に飛び出していったそうで・・・)

ファイテン「い、急いでいたし・・・」

百花文(着実に一歩ずつ、と言ったそばからそう言うんですか?)

百花文(転送した後に話を聞いて驚いたんですからね!)

ファイテン「ご、ごめんなさい・・・」

百花文(ふふふ・・・わかればいいのです)

百花文(現れたあやかしの名は【天狗火】水辺に現れる怪火のあやかしだそうです)

百花文(また、天狗火の影響か、陸地にも海の伝承からきているあやかしが現れるそうです)

百花文(魚の姿をしているそうですが、そちらも気をつけてくださいね)

ファイテン「うん。わかった。いつもありがとうね!」

百花文(私はこれが役目ですからね!お土産は任せましたよ!)

先遣隊「この辺り一帯は漁港になっている。かくりよの門は三島の方にあるらしい」

町人「漁?今日も非番だよ。港の方に行けば皆いるんじゃないか?」

町娘「天狗様って言えば、普通は山に住んでるよね。海沿いのこの町に来てるのは何でだろう?」

町娘「天狗もそうだけど、何だか最近、町の中で色んなものを見るような・・・」

漁師「岬の方の騒ぎと同じ時期からなんだが、誰も見知らぬ娘が町に住んでいるとかいう話があってな。見たヤツ曰く、ボソボソ独り言を喋っているらしい」

漁師「あっちゃー・・・またバレた。陸近くの魚は警戒心が強くていけねぇや」

漁師「美濃や尾張で売り出すとなると沖まで行って、結構な量を獲らんといかんな。だからこそ困っているんだが」

陰陽師「天狗と海、魚、舟・・・根強い関係性ってあったかな・・・?」

漁師「こっそり漁に出ようと思った仲間を止めたよ。天狗火で災い貰ったらそれどころじゃねえしな!」

町人「ちょっと前に旦那が漁に出ちまって、舟を壊されたって泳いで帰って来てねぇ。それ以来、漁は殆どしていないんだよ」

漁師「漁に出れないとなると町の皆が食いっぱぐれちまうよ」

漁師「ほんとなら今頃、沖の方で網を引っ張ってなぁ・・・」

町娘?「もう・・・近くに・・・あれば・・・ったのに。・・・つまんない・・・げ・・・」

三河の商人「誰も漁に行かないから俺も仕事がない・・・。天狗火とやらがいなくなればなぁ」

陰陽師「・・・悔しいが、私に守護者を倒す力は無い。だが、天狗火が討伐された後、この地に結界を張るのは私が引き受けよう」

先遣隊「天狗火はこの先だ。これを討伐すれば一軒落着・・・のはずだ」

町娘「岬で囲まれている海の真ん中にね、小さな島がいくつかあるの。いつか、人が住めるようになるみたい」

【三河国 沿岸漁村 守護者前】

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ファイテン「瘴気からすると、ここに天狗火がいるのかな・・・?」

百花文(そうですね。聞いていた情報とも特徴が一致します)

百花文(天狗火は本来、海の近くではなく、川に現れるとされますが、水辺に怪しい火がでた、から転じてここに現れたのかもしれませんね)

ファイテン「天狗ちゃんが聞いたらどう思うのかな・・・」

百花文(言い辛いのですが、天狗火も風と火の属性攻撃を得意とします)

百花文(相手の属性攻撃を弱めることをこまめに行ってくださいね)

ファイテン「うんっ。わかった!それじゃ、行くね!」

陰陽師「岬には結界を張った。一応、普通の人の前にはあやかしは現れなくなっているだろう」

先遣隊「話題になっている謎のあやかしだが、真相や正体は不明のままだが様々な尾ひれが付いているみたいだな。後々、妙な事にならなければいいが」

【逢魔時退魔学園】

ファイテン 三善

三善先生「天狗火を討伐したそうだな。時間はかかりそうだが、漁が再開できる。と、感謝の報があったぞ」

ファイテン「わぁ・・・ちょっと、嬉しいですね」

三善先生「あやかしから人を救うのも陰陽師の務めだ。最近は実感することも少なかったと聞いている。良かったな」

ファイテン「はいっ!」

三善先生「これで【三河三島】に船が出せるようになったが、実際の準備には今しばらく時間がかかるそうだ」

三善先生「海に出られる、と言っても、やることが多いらしくてな」

ファイテン「漁に出られなかった、と聞きました。それならまずは安全の確保と、漁の再開から、ですよね!」

三善先生「ああ、わかっているならばいい。焦ってはいないようだな」

ファイテン「文ちゃんに怒られましたし・・・」

三善先生「本当に、二人は良い関係を築けているようだな」

三善先生「移動用の船の準備ができたら伝えるようにしよう。その時まで、少し待っていてくれ」

ファイテン「はーい。わかりました!」


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