第37章 手を取り合うために 弐

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【逢魔時退魔学園 裏手】

文 ファイテン 悪路王1

ファイテン「………」

悪路王「………」

悪路王「過去、吾であったものは、お前の母と吉備泉__その二人と共にあったことがある。これは話したことはあったか?」

ファイテン「えっと…多分、無いです。けれど察してはいました」

悪路王「目はお前の母と。倒したものを力とできる加護は吉備泉に」

ファイテン「それ、私と澄姫にしたことと全く同じ、ですよね」

悪路王「方位師よ、百花文よ。問おう、ファイテンの力を」

百花文「えっ?」

悪路王「あやかしを倒せば力を増すこと、おかしいとは思わなかったか?」

百花文「…それは…」

悪路王「あやかしを討伐し、経験として得る。それがそのまま力となる」

悪路王「極端なことを言えば、案山子を相手にしているだけでも成長する」

悪路王「まるで式姫のようにな」

百花文「……」

悪路王「あの娘と吉備泉に与えた加護はそのような力だ」

悪路王「いざと言うときに、親友を止めたい。吉備泉はそう言っていたな」

ファイテン「母も、そうだったんですか?私の様に」

悪路王「人の間に稀に生まれるらしい。このような体質を持つものは」

悪路王「まさしくお前の母はそうだった。近くで見て確信したものだ」

悪路王「…ここからは憶測になるが__」

悪路王「吾であったものと、吉備泉はお前の母をこちらに戻そうとした」

悪路王「吉備泉は自らが消える前に、それを式姫に託し、そのまま消えた」

悪路王「ここまでは大丈夫か?」

ファイテン「…はい」

悪路王「幽世へお前の母が閂として消えた後、残された赤子。同じ魂の赤子」

悪路王「それがお前だ」

悪路王「お前を再度、幽世の閂として大門に至るように仕向ける」

悪路王「仲の良い陰陽師は都合がよかった。力をつけるように向け、協力させても__あのように敵対させてもよかったのだ」

ファイテン「……っ!」

悪路王「お前が破れていれば、あの娘は成り代わり、閂になっていたであろう」

悪路王「だが、吉備泉と【吾】は次第に疑問を覚えるようになっていた」

悪路王「ファイテン。お前と接し、共にいる間にな」

悪路王「関が原での戦いは、吾らはお前たちが再び手を取り合うために__再び道が交わるために、必要なものだと思うようになっていた」

悪路王「その結果、吾は本体の思惑から外れ、本体とは別になってしまったがな」

ファイテン「それが、今言いたかったことですか?」

悪路王「続きは泉と共に話そう。まだ、本題ではないからな」

………

百花文 ファイテン 悪路王 吉備泉

吉備校長「悪の話は終わったか。では、続きじゃな」

吉備校長「悪は完全に分離したが、ワシはまだわからなかった」

吉備校長「主の遺志を継ぐべきなのか、新たな手段を見つけるべきか」

吉備校長「熊野地方より始まった、片目を失った阿弖流為の暗躍」

吉備校長「その最中までずっとじゃ。見極めることができなかった」

吉備校長「…結果として、ワシは今もどうしていいか、まだわからぬ」

吉備校長「が__」

吉備校長「ファイテンを贄にすることだけは避けたいと思っている」

百花文「…その割には、そう言うには、今回の四国にしても__」

百花文「余りにも身勝手すぎます!何も言ってくれないままで!」

吉備校長「四国の逆打ちは、ファイテンに力をつけさせるためだけではない」

吉備校長「幽世との繋がりが強くなることはわかった上で__ワシがファイテンに代わり、閂として消えるつもりじゃった」

吉備校長「幽世に近い存在、式姫。当代一の力を継いだ陰陽師」

吉備校長「この二つを兼ね備えていたのは、ワシだけじゃからの」

ファイテン「澄姫と同じこと、考えてたんですね…」

吉備校長「海坊主に関しては、真に想定外じゃったがな…」

………

吉備校長「四国遠征がああなってしまった理由は、ワシら二人にある」

悪路王「今の吾と、泉。その身勝手が大きな原因」

悪路王「…すまなかった」

悪路王土下座

悪路王「守るために手にした刀を佩く資格。失うところだった」

吉備校長「…すまなかった。ワシの不明さ故に、今回の事態を招いた」

吉備泉土下座

百花文(お二人が…頭を?)

ファイテン「……」

ファイテン「二人とも、顔を上げてください」

百花文 ファイテン 悪路王 吉備泉

ファイテン「まずは、校長先生から」

(…パンッ!)

ファイテン「いい加減にしてください!どれだけ、どれだけ!」

ファイテン「澄姫のその言葉を聞いたとき、私がどう思ったと!」

吉備校長「……」

ファイテン「次は、悪路王さんに」

(…ドゴッ!)

ファイテン「手に届く高さがお腹だったので、こちらに失礼しました」

悪路王「…中々に、効くな」

ファイテン「そして、この杯の水も」

(パシャッ!)

ファイテン「文ちゃんも、貸してね」

百花文「えっ…あ、えっ。は、はい」

(パシャッ!)

ファイテン「今の水の冷たさ、覚えておいてください」

ファイテン「それが、仲直りの条件です」

吉備校長「…相、わかった。ありがとう、ファイテン」

悪路王「忘れぬようにしよう。吾の身勝手が生んだことを」

………

ファイテン「よろしい!ではお二人の般若湯、半分ずつ貰いますね」

(…クイッ!)

百花文「あっ…!」

ファイテン「何をしたかったか、この杯の意味、わかりました」

ファイテン「だから私も怒りを隠しませんでした。その上で、この杯をお返しします」

ファイテン「…ほんっとに面倒ですね。二人とも!」

ファイテン「澄姫のところにいってきます。文ちゃんも、一緒に行こう」

百花文「あっ、はい!」

………

百花文 悪路王 吉備泉

百花文「初めて、本当に謝って貰った気がします」

百花文「…ありがとう、ございました!」

吉備泉 悪路王3

吉備校長「やられた、の…」

悪路王「ああ、そうだな」

超鈴鹿御前「お二人の姿、見ていてはらはらしましたわ」

超鈴鹿御前 悪路王 吉備泉

吉備校長「鈴鹿御前か…」

超鈴鹿御前「悪路王。今だからこそ、鬼として、式姫として言いたいことがあります」

超鈴鹿御前「伝承では私たちを夫婦とするものもありますから__」

超鈴鹿御前「そのよしみとして伝えておいてあげますわ」

超鈴鹿御前「いい加減、鬼の力と人の力。比べて考えるのはお止めなさい」

超鈴鹿御前「力など関係ない。遥か昔より鬼は人に最も近い隣人だった」

超鈴鹿御前「上でも下でもない。戦うこともあれば、手を結ぶことだって」

超鈴鹿御前「そして、最後には消えるもの。今までのあなたは単なる身勝手な、力を過信した子供でしたわ」

悪路王「…厳しいことを言うな。だが、ああ。今ならその言葉の意味、受け取ることができる」

悪路王「吾は未熟だった。ただの小童だったのだな、と」

………

吉備泉 悪路王3

悪路王「泉よ。以前の教員の話、受けて良かったと、伝えておこう」

吉備校長「ふむ…理由を聞いても?」

悪路王「この式姫の言う通り、鬼は最後には消えるもの」

悪路王「ならば残せるものがあることは、悪いことではないはずだ__」

手を取り合うために 参に続く


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