第29章 山城:宇治川近辺

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文 ファイテン 校長

【逢魔時退魔学園】

吉備校長「話は済んだようじゃな」

吉備校長「前鬼、後鬼についてはワシの方で調べておこう」

吉備校長「文もよろしく頼むぞ。ファイテンに無関係とは思えんしな」

ファイテン「はいっ!」

吉備校長「山城国にオヌシが立ち入った影響のせいかかくりよの門に反応があった。大門の方ではないがな」

ファイテン「まだ、力が足りない。そう言うことですよね…?」

吉備校長「そう言うことになるのう。今少し、だとは思うのだがな」

吉備校長「現れたかくりよの門の守護者は橋姫じゃ」

吉備校長「宇治の橋姫について聞いたことはあるか?」

百花文「橋姫伝承は数多いですが、その中でも最も有名なものですよね」

百花文「嫉妬深い鬼女としての側面と、その土地を守る神としての側面。どちらも併せ持つ、と聞いています」

吉備校長「その通りじゃ。門が開きし土地は山城国 宇治川近辺。宇治の橋姫伝承そのものの土地となる」

ファイテン「わかりました!現地に向かうようにします!」

ファイテン「大門が反応しないのは残念だけど、放ってはおけませんしね」

吉備校長「ああ…その通り、じゃな」

………

百花 ファイテン 紫乃 澄姫

ファイテン「あっ、澄姫!」

土御門澄姫「ファイテン。あなたもこれから宇治川のかくりよの門へ?」

ファイテン「澄姫もそうみたいだね!一緒に向かうのも久しぶりだなあ」

紫乃「厳密には一緒じゃないわよ。…多分、だけどね」

百花文「紫乃さんは、しばらくこちらに残られるのですか?」

紫乃「私だけじゃなく澄姫もね。前鬼、後鬼を従えたまま別邸に留まるのも抵抗あるし。何を他から言われるかわからないしね」

紫乃「それよりも、文が教えて貰った場所は宇治川近辺のどの辺になるかしら?」

百花文「えっとですね__」

………

紫乃「やっぱり、微妙に場所が異なるのね。伝承が多いだけはあるわ」

百花文「完全に一緒、ではないんですね」

百花文(伝承のせい、だけですよね…)

【山城国 宇治川近辺】

宇治川近辺

ファイテン「街も久しぶりに感じるなあー。少し懐かしいかも」

百花文(宇治の橋姫は地方の方に広く知られている伝承です)

百花文(今回の門に関しても、あやかしを恐れる声はあれ、守り神としての橋姫を歓迎する声もあるみたいですね)

ファイテン「少し、両面宿儺さんを思い出すね…」

百花文(あのときと違って信仰までは至っていないようです)

ファイテン「そっか。それなら良かった。嫉妬の面も気になるけど…」

百花文(言いにくいですが、自分の夫の浮気を抑制する意味でもこの橋姫の顕現を歓迎する、そんな側面もあるようですよ)

ファイテン「うーん…その辺は私にはよくわからないなあ…」

百花文(現れるあやかしの中には、橋姫に引かれて変容した式も含まれているようです)

ファイテン「わかった!それじゃ門に向かうね!」

先遣隊「この街は多くの川が流れています。移動するときは橋を渡って下さい」

行商人「川沿い街ということもあって様々なものが船ではこばれてきます」

町人「普段は穏やかな川だけど、大雨なんかがくると水かさが増して大変なんだよ」

町人「船や橋がいっぱいなのはいいけど、あやかしがいっぱいなのはちょっと…」

町人「逢魔時退魔学園の生徒かい?役に立つならそこの道具を持っていってくれ」

行商人「私もここへは船に乗ってやってきました」

町人「この街は遊覧船も多く運行しています。よろしければぜひ乗ってみて下さい」

町人「あやかしは船に乗り込んでこないよな…」

町人「この街では釣りを楽しむ人も多いぞ」

【かくりよの門 守護者:橋姫】

ファイテン 文

ファイテン「かくりよの門についたよ。守護者は橋姫だよね」

百花文(はい。間違いないようです)

ファイテン「嫉妬と、守護か…」

ファイテン「澄姫はいない。門の場所が違うのかな…」

ファイテン(いいや。後で聞いてみよう!)

【逢魔時退魔学園】

百花 ファイテン 紫乃 澄姫

土御門澄姫「ファイテンも私とほぼ同じ時間に門を閉じたみたいね」

紫乃「嬉しそうにしないの。まったく…感情を隠すのが下手なんだから」

ファイテン「あっ、澄姫に紫乃さん!」

百花文「今戻られたのなら、私達と同じくらいだったようですね」

ファイテン「そうだ。澄姫の門の場所だけど、私とは違ったのかな?」

土御門澄姫「そうね…」

紫乃(コクリ)

土御門澄姫「ええ、違ったみたいよ。私の場合の橋姫は__」

………

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吉備校長「土御門には嫉妬の鬼女。ファイテンには守護と嫉妬」

吉備校長「見せる側面の違いが門の場所を違わせた、か」

悪路王「あの二人を考えれば当然の結果だな」

悪路王「情報の交換を見逃しても良かったのか?」

吉備校長「構わんよ。黙っていてもいずれ知るじゃろう__」

吉備校長「守護者としての側面はファイテンだけに見せた__とな」

吉備校長「前鬼、後鬼。そして橋姫__」

吉備校長「前鬼、後鬼の話。オヌシはどこまで信じる?」

悪路王「鬼が誓うと言ったのだ。完全な虚ではなかろう。だが、全てが真実と言うわけでもないな」

悪路王「特に加護の手順を間違えたという部分、あれは何かを隠しているのであろう」

吉備校長「気づいた紫乃の言葉も、あれは話を終わらせたかった、とも取れたな」

悪路王「それに__」

吉備校長「それに?」

悪路王「吾が憑いているとわかっていながらの発言、吾自身への問いや言葉もないこと…」

悪路王「考えもあるのだろう。今、吾が口を出したら道化になる。しばし見守ることにしよう」

吉備校長「しかし、以前オヌシが山城国へ向かえ、と言ったのは知っておったが__今の段階では、隠されている【かくりよの大門】は反応せんかったか…」

吉備校長「ファイテンの言葉の端に悔しさが出ておったな」

悪路王「【かくりよの大門】が反応するのは恐らく力だけではない__覚悟と場数のため、いずれ淡路の島にある【社】を教える必要があろう」

吉備校長「やはりそれは避けられるか…じゃが__淡路島の社への遠征は、悪路王が望んでいることでもある」

吉備校長「…違うか?」

悪路王「さて、吾は目だ。答えようがない。これで良いか?」

吉備校長「…良くはない、がこれ以上は聞かないでおくとしよう」

吉備校長「オヌシの口から淡路の名が聞けただけでも今は良しとせねばな」

悪路王「機は満ちつつある…」

悪路王「吾らがこうして話せること、あと幾度も無いやも知れぬな」

吉備校長「そうか。ではワシは少しでも長く続くことを望んでおこう」

吉備校長「ファイテンのためにも、ワシ個人のためにも…」


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