第18章 陸奥: 悪路

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【逢魔時退魔学園】

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三善先生「これから悪路王へと向かうのだが、出発の前に気を付けておくことがある」

三善先生「いままで方位師との会話で使っていた【伝心】に関してだ」

百花文「あっ、私、ですか?」

三善先生「城の地下は伝心が極端に届きにくい。転送や帰還は問題ないのだがな」

百花文「それでは、私の役目は・・・」

三善先生「見ること、聞くことは問題が無い。出来る範囲で、補佐を行ってくれ」

百花文「はい。わかりました」

ファイテン「行ってくるね、文ちゃん!」

百花 三善

三善先生「・・・いざというときは、すぐに帰還できるように、注意していてくれ」

百花文「・・・わかりました。それほどの場所、なのですね」

三善先生「ああ、だが場所と言うよりも悪路王が、な」

【降雪城址 悪路】

悪路

ファイテン「地下はどうしても暗いね。外の雪が懐かしくなるくらい」

百花文(・・・・・・)

百花文(・・・い・・・。)

ファイテン(聞こえが悪い。三善先生の言う通り、伝心が届いていない)

ファイテン「転送は・・・大丈夫そう、かな」

ファイテン「ちょっと心細いけど、先に進まないとね」

先遣隊「地下に行けるように、梯子を掛けておいた。しかし、悪路王に用があるのか?」

【悪路王の間】

悪路王「数年ぶりの客かと思えば、今度は間をおかずに二人目か。珍しいな」

ファイテン一人

ファイテン(声が・・・そこら中から?どこにも、姿は見えないのに)

ファイテン「一人目の子は、どうしましたか?」

悪路王「安倍の一族か。吾(われ)

を退屈させたのでな。加護を与えて帰したぞ」

ファイテン「安倍・・・?土御門ではなく?」

悪路王「陰陽師だろう、お前は。・・・ふむ。血族に連なるものではないのか」

悪路王「伝心を通してやった。詳しくは向こうに聞くがいい」

ファイテン「伝心を通した、って・・・」

文 ファイテン 同列

百花文(聞こえますか?)

ファイテン「文ちゃん!?」

百花文(陰陽師の開祖と呼ばれる安倍氏。土御門の一つは、その末裔と言われています)

ファイテン「なるほど。ってことは、澄姫はもう帰ったのかな」

悪路王「今すぐお前を帰しても良いのだがな。血に依らぬ陰陽師は久しぶりだ」

(ブチッ・・・)

文 ファイテン 悪路王

ファイテン「えっ!?」

悪路王「吾の血は鬼を産む。身体の一部であれば、新たな吾すら生み出せる」

悪路王「これは吾の眼球だ。姿を見せた方が便利であろう」

悪路王「名を名乗れ、そして目を見せろ。鬼の一族をも使役する陰陽師よ」

ファイテン「・・・ファイ・テンです」

悪路王「本当に懐かしさばかり覚えるな、今日は。しかしこれは困った」

百花文(困った・・・?どういうことです?)

悪路王「余りに懐かしくてな、飽かんのだ。吾を退屈させればすぐに帰すのだが」

悪路王「陰陽師。平凡な質問でもして吾を飽かせよ。替わりに答えられることなら答えよう」

百花文(質問って、そんなに急に・・・)

ファイテン「私は陰陽師である前にファイテンです」

悪路王「図に乗るな陰陽師。吾に名前を呼ばれたくば、泉程度には力をつけよ」

ファイテン「ああ、やっぱり知り合いだったんですね。校長先生が【あやつ】と言っていました。

ファイテン「悪路王。私はあなたとの会話を望みます」

悪路王「・・・・・・」

ファイテン「吉備泉は、校長先生は【謁見】と言っていた。けれど、それじゃ足りません」

ファイテン「あなたと会話をするために、まずは私を名前で呼んでもらいます!」

百花文(えっ、あの、ファイテンさん!なんで武器を抜いて・・・!)

悪路王「・・・・・・変わらぬな」

ファイテン「えっ!?」

悪路王「刃を合わせてやる。光栄に思え。そして吾を退屈させてみよ」

悪路王「でなければ、お前が死ぬだけだ」

【逢魔時退魔学園】

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土御門澄姫「・・・・・・」

ファイテン「澄姫も戻ったのかな?ねえ、どうだった?」

土御門澄姫「ファイテン・・・あなたは何も思わなかったの?」

ファイテン「何も、って・・・」

土御門澄姫「そう。悪路王から聞いていないのね。それなら、いいわ・・・」

ファイテン「あっ!澄姫!?」

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吉備校長「・・・戻ったか、悪路王との謁見はどうじゃった?」

ファイテン「それが・・・戦いになりましたが、途中で消えてしまいました」

百花文(戦いになったのはファイテンさんのせいですけどね・・・)

吉備校長「・・・ふむ?少し目を見せい」

ファイテン「えっ・・・」

吉備校長「・・・」

吉備校長「校舎裏に来い。少し話がある。聞きたいことも増えたしの・・・ワシは、先に行っておるぞ」

【逢魔時退魔学園 校舎裏】

吉備校長「来たか・・・ここならいいじゃろ。のう、悪よ」

???「ああ。そうだな・・・」

ファイテン 悪路王 校長

悪路王「久しいな、泉よ」

ファイテン「えあっ!?ええっ!?」

百花文(えっ!?あの、そこに・・・!?」

吉備校長「そのまま目に取り憑いたか。何とも、何もかも懐かしいな」

悪路王「安倍の末裔と、この娘。どちらもお前の教え子か?」

吉備校長「そうじゃな。面白い子たちであろう?」

ファイテン「あの、校長先生?」

吉備校長「ファイテン。オヌシは悪路王に取り憑かれた」

ファイテン「ええっ!?」

百花文(そ、そんな!大丈夫なんですか!?」

吉備校長「害はない。少なくとも身体の上はな。ワシが保障しよう」

吉備校長「何か見たいものでもできたか?あのときのようにな」

悪路王「こやつはな・・・足りぬと言ったのだ。吾との謁見を」

悪路王「会話をしたいと抜かした。名前を呼べ、とも。懐かしく思わない方が無理だ」

悪路王「長く伝えられ、人として呼ばれた名も忘れ、擦り切れても、覚えていることがある」

悪路王「お前やあいつに取り憑いていたときがそうだ。認めてやろう、退屈はしなかったと」

悪路王「ファイテン」

吉備校長「ほぅ、名前で呼ぶか、悪よ」

悪路王「老いた嫉妬は見苦しいぞ、泉」

ファイテン「あっ、わ、私!?」

悪路王「【山城国】へ向かえ。十分に力をつけながらな」

悪路王「吾が退屈するまでの間、こうしてお前に取り憑いていよう。だが、力は貸さん。安倍の末裔に与えた加護もな」

悪路王「あの娘の力は大きくお前を凌いだが、お前はその分を自力で埋めろ」

百花文(山城国ということは、やはり京へ・・・?)

悪路王「京とは限らんがな。瘴気と共に溢れている【力】がある」

悪路王「そこを目指すといい。お前の探す【式】がいるかもしれんぞ」

ファイテン「は、はい!でも、どうしてあの子のことまで・・・?」

悪路王「泉から事前にある程度は聞いていた。が、質問ではなく、刃を抜かれるとはな」

ファイテン「いやー、その、それはー・・・その場の空気というかですね」

悪路王「さて、吾は少し泉と話がある。少し、席を外していろ」

吉備校長「そうじゃの。ご苦労じゃった、ファイテン」

ファイテン(こ、これは)

百花文(二人にしろ、ってことですよね・・・)

ファイテン「えっと。それじゃ、あっちに行ってます!」

悪路王 校長

悪路王「これで満足か、泉よ。安倍にはには力を、ファイテンには目を」

吉備校長「何を言うか。拒否せんかったということは、オヌシも面白いと思ったからであろう?」

悪路王「吾とて情はある。知己が討たれようとしているならば、考えることもな」

吉備校長「オヌシも変わったのう・・・悪よ。いや、変えたのはワシらか」

吉備校長「自惚れではなく、そう思うよ。最も、主に変えたのは・・・」

悪路王「その話はそこまでだ。吾をあまり不愉快にするな」

吉備校長「そうか。すまんかったな・・・」

悪路王「概念に過ぎなかった【悪路王】に姿を与え、使役せんとした欲深き陰陽師の末裔よ」

悪路王「大門の真相はお前の弟子に伝えた。吾の与えた力に、貫かれんようにな」

吉備校長「土御門はそう短絡的にはならんさ。あやつは、昔のワシとは違う。今は、信じるだけじゃよ。それよりも__」

吉備校長「常夜の境界の伝言も頼んだぞ。大分深部まで潜っておるようじゃしの」

悪路王「何もかも、あの時と同じ、か…。いいだろう。伝言は任された」

悪路王「だが、お前の考え。いつか全てを話してもらうがな」

吉備校長「オヌシにいつまでも隠し通せるとは思っておらぬさ…」

【ファイテン自宅前】

ファイテン 文 対面

ファイテン「何とも・・・驚いたね、文ちゃん」

百花文(ええ。でも私はずーっと驚かされっぱなしですが!)

ファイテン「お、怒ってる?」

百花文(怒ってはいませんけど・・・軽くこう、叱りたい気分ですね!)

ファイテン「うぐぐ・・・」

文 ファイテン 悪路王

悪路王「待たせたな、では案内を頼むぞ」

ファイテン「うぇぇぇっ!ど、どうしてここに!?」

悪路王「吾はお前に憑いたのだ。当然のことだろう?」

ファイテン「案内って・・・」

悪路王「お前の自宅に案内しろといったのだ。心配するな。気配は完全に消しておこう。街の人間や式姫に気取られても面白いことにはならないのでな」

ファイテン「その・・・目に憑いたってことは、やっぱり?」

悪路王「これから先、お前が見、感じたことは吾が共感しよう」

悪路王「付き合いが長くなるか、短くなるかはお前次第だ。精々、吾を退屈させてくれ。ファイテン」

ファイテン(ど、どうしよう文ちゃん!)

百花文(ええ。これは一大事ですね)

ファイテン(部屋、全然片付けてないよ!)

百花文(・・・・・・そこなんですか・・・)

悪路王「また、吾と戦いたくなったのであればかの城を訪ねるといい。いつでも相手をしようぞ」

ファイテン「えー。この場で、とかダメなんですか?」

悪路王「・・・吾を呆れさせるな。忘れたのか、吾の血は鬼となる。それに吾は今、単なる【目】だ。戦うほどの力は持っておらぬ」

ファイテン「それじゃ、戦いたくなったらまたお邪魔しますね!」

悪路王「気安いな。だが、それも良かろう。お前らしい・・・」

悪路王(いや、あいつらしい。か・・・)

ファイテン「?どうしました?」

悪路王「いや、そう言えば・・・泉が吾との手合わせを試練にしたと言っていたぞ」

ファイテン「その試練も、あの場所へ?」

悪路王「いや、少し違うな。【ワシと戦った時のように】と言っていた」

ファイテン「うっ・・・校長先生が戦った、と言えば・・・」

悪路王「ああ、お前とやり合ったときよりも吾の力は高まっている・・・そもそも謁見だけのつもりだったのだがな。誰かが武器を抜かなければ」

百花文(本当に、ですよ!びっくりしたんですから!)

ファイテン「うう・・・・・・」

悪路王「ファイテン一人では無理だろう。仲間を連れてくるがいい。その時は、相手をしよう」

ファイテン「はーい」


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