第40章 肥後:阿蘇山

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【逢魔時退魔学園】


吉備校長「ほう…土御門がそのような手段で無事を伝えてきたか」

吉備校長「まずは、それを聞いて安心した。しかし_あやかしの行動を利用するとは、さすがじゃのう」

ファイテン「無事なのは良かったんですが、未だ幽世にいることは変わりません」

ファイテン「それに渠師者が口にした言葉が気になります」

ファイテン「私が澄姫に会うのは叶わない…と」

吉備校長「…うむ」

百花文「せめて所在だけでも分かれば、手の打ちようがあると思うのですが」

吉備校長「それについては、幕府が何か知っているかもしれん」

ファイテン「え…!?」

百花文「校長先生、どういうことですか?」

吉備校長「…どうも幕府は封鎖の為に出した人間を使って、幽世のことを調べているようなのじゃ」

吉備校長「定かではないが、中に陰陽道を使える者がいる可能性も出てきておる」

ファイテン「本当ですか…!?」

吉備校長「現地の調査隊からそのような情報が上がってきておってな」

吉備校長「もう少し材料を集めた上で幕府の目的を調べようと思っているところよ」

吉備校長「八重か、ちょうどいい時に戻った」

三善先生「泉先生、たった今、調査隊から大変な報せが届きました」

吉備校長「…なんじゃ」

三善先生「ファイテン、百花も聞いてくれ」

三善先生「幽世から流れ出る特殊な瘴気ですが、その瘴気が幽世近辺だけでなく…九州全体に広がっているそうです」

吉備校長「なんと…」

ファイテン「豊前や肥前と同じ、諍いを引き起こす瘴気…ですか」

三善先生「ああ。瘴気の影響か各地方で謀反が起き、幕府は対応に追われているそうだ」

三善先生「だが…対応もせず、その地を去る役人も出て来ているとか」

吉備校長「…世の常じゃの」

三善先生「ええ。幕府が直接、現地の封鎖に出していた人員は一旦引き揚げているそうです」

吉備校長「戦のない世じゃ。指揮を執る者の中に_大名や役人の子弟が、功を立てる為に混じっておったのじゃろう」

吉備校長「わが身かわいさに民衆を捨てる、か」

三善先生「幕府の対応も、暴動の鎮圧ばかりか、船による渡航禁止にまで及んでいるそうです」

吉備校長「ため息が出るが、こればかりは仕方ない。その瘴気をなんとかする他にないだろうの」

百花文「しかし、どうして急に瘴気が広がったのでしょうか?」

ファイテン「そうだね。あやかしの仕業か、それとも、またどこかで幽世に繋がったか…」

三善先生「両方だ。瘴気の報とともに、新たな幽世の報も入ってきた」

三善先生「幽世が現れたのは肥後まだ目撃情報はないが_幽世からあやかしが出てきていると考えて間違いないだろう」

ファイテン「なるほど…そうですよね。校長先生、八重さん、すぐに行かせてください」

ファイテン「瘴気の原因がそこにあるなら、断ち切らなければいけませんし…」

ファイテン「それに、別の場所で幽世と繋がったのなら、そこで澄姫を見つけられるかもしれない…!」

三善先生「ああ。私も同じ希望を持っている。ファイテン、頼まれてくれるか?」

ファイテン「もちろんです!」

ファイテン「文ちゃん、転送をお願いできるかな?」

百花文「伝心で見守ってますから、無茶はしないでくださいね!」

ファイテン「うん!」

【肥後国 阿蘇山】

ファイテン「……」

百花文(……)

ファイテン「ここって、阿蘇山のはず…だよね」

百花文(はい、そのはずです…)

百花文(景色が美しいことで有名な場所、そう記憶しているのですが…)

ファイテン「うーん、見渡す限り荒れ地だなぁ…」

百花文(…恐らく、幽世の影響を受けてるのでしょう)

ファイテン「かなり影響していると思う。なぜかと言うと_さっきからね、すっごく暑いんだ!」

百花文(ええ!?)

ファイテン「肥前はこんなに暑くなかったし、山の上だから涼しいはずなのに_本当にもう…暑くて暑くて…!」

百花文(気温が上がる…?あやかしの影響だとすると…調べれば、何か分かるかもしれません。すぐに資料をあたってみます)

ファイテン「うん、お願い!」

ファイテン「熱気の源となるあやかしが、幽世にいるかもしれないんだね」

ファイテン「この暑さは、さっさと何とかしないと!急いで幽世の入り口を見つけるね!」

先遣隊「なぜだか、ここは妙に暑いな…」

旅人「どうしてこんなことに…」

旅人「まさか1年でこれほど変わってしまうとは…」

武士「君も迷ってるのか?景色が似ているからか、方向感覚が無くなってしまうな」

武士「なぜか無性にそこの2人に腹が立つような…」

旅人「思い出の桜の木が無事で良かったわ」

旅人「山は変わり果ててしまったが、この桜は無事だったようだな」

【大桜】

百花文(桜の木…ですか)

ファイテン「木は一本も残っていないのに、どうしてこの木だけ残ってるんだろう…?」

ファイテン「あ…!」

百花文(どうしました?)

ファイテン「木の幹に触れると、温かい!というか、熱いくらい…!」

ファイテン「幽世にいるあやかしが、この暑さの源なんだとしたら_あやかしの周囲、つまり幽世側は暑いはずだよね!」

ファイテン「きっと、ここから幽世に行けるんだよ!」

百花文(なるほど…、あっ_)

ファイテン「あれ?文ちゃん?」

ファイテン「おーい…」

百花文(すみません、学園に報せが入りまして)

百花文(ファイテンさん、すぐに戻ってきてください)

ファイテン「どうしたの?」

百花文(ファイテンさんの周りの異常な暑さが、今、九州全体に広がっているそうです!)


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