第17章 出羽:五重塔

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【逢魔時退魔学園】

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三善先生「次なる遠征地は出羽にある霊山だ。有名な場所だが、聞き覚えはあるか?」

ファイテン「はい!うっすらと!」

百花文「ええと・・・三つの山からなる霊山ですね。古くからの伝承も多く、それこそ昔話に名を連ねる神々を祀っているとか」

三善先生「そうだ。陸奥国には霊場が多いと言ったが、先の霊山とこの三山は、中でも特に大きい」

三善先生「この出羽霊山の五重塔には、ある妖怪が【かくりよの門】ごと封印されている」

ファイテン「妖怪・・・?あやかしではなくて、ですか?」

三善先生「あやかしと呼ばない理由は簡単だ。【それ】はかくりよの大門以前からあった」

三善先生「かくりよの大門が開いた後、影響を危惧した校長先生が、直々に封印したものになる」

百花文「ああ、だから【かくりよの門】ではなく【かくりよへの門】なのですね」

三善先生「大霊山の象徴ともいえる五重塔の頂上には、力ある者しか見えぬものがあった」

三善先生「【かくりよ】と直接繋がっている場所がな。今回の遠征先は、そこだ」

百花文「門を閉じるわけではない、ということは、これも修行ですね!」

三善先生「そうなるな。現地の五重塔には先遣隊の他、その土地の人もいる。良く話を聞いて、頂上にいる【がしゃどくろ】を討伐して来るんだ」

ファイテン「はーい」

【出羽三山 五重塔】

五重塔

ファイテン「高さでいえば、そんなにではないんだけど中は入り組んでいるみたいだね」

百花文(そうですね。何度か階層を往復する必要があるかもしれません)

百花文(ですが、陰陽師の修行用に役立つものもあるらしいですよ)

百花文(内部は荒らされていますが、あやかしは人を襲わないそうですし・・・)

ファイテン「その分私に襲い掛かってくるんだけどね!」

ファイテン「・・・それでも、少し気が軽いかな。最近色々あったから」

百花文(そう言えば、先ほど土御門さんが、そちらから学園に戻ってきましたよ)

ファイテン「えっ、澄姫が!?」

百花文(はい。ファイテンさんに負けじと最近頑張っているみたいです)

ファイテン「それは負けていられないね!」

先遣隊「建物の中だけあって、色々な物があるぞ。見つけたものはそのまま使うといい」

侍「道行に陰陽師が扱う道具や薬があるぞ。誰かが置いていったものらしいが」

陰陽師「これ以上は私じゃどうにもならないわ。まだ修行不足みたいね・・・」

先遣隊「この先の階段を登ると最上階だ」

【出羽三山 五重塔 守護者前】

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ファイテン「上がって、下がって、上がって。結構気分が滅入るね、これは・・・」

百花文(外が苦手な私でも、この屋内は苦手ですね)

ファイテン「文ちゃんの得意な場所って、どこなのかな?」

百花文(過ごしやすい温度で、出来るだけ高低差が少ない屋内でしょうか!)

ファイテン「例えば?」

百花文(私が今いる場所ですね!)

ファイテン「うん、そうだね。戻ったら一緒に走りこみでもしようか!」

百花文(ゲホッ、ゴフッ!)

ファイテン「・・・・・・」

百花文(・・・・・・)

百花文(あれ、冗談では?)

ファイテン「ないよー」

百花文(うぐぐ・・・えっと、がしゃどくろですが、校長先生に封じられているとはいえ、いままでの守護者より強力です)

百花文(さすがは【妖怪】と呼ばれるだけはあるみたいですね。校長先生も、封じるのが精一杯だったのかもしれません)

ファイテン(がしゃどくろ・・・報われない、弔われない亡骸の行きつく先。これで、いいのかな・・・?)

ファイテン(もしかして、校長先生が【このためだけ】にあえてこの状態にしているのなら・・・式姫を使役するのと、修行のためにあやかしを利用すること。違いないのかもね)

【逢魔時退魔学園】

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吉備校長「戻ったようじゃの、ご苦労じゃった。良い試練にはなったか?」

ファイテン「校長先生。がしゃどくろはひょっとして、修行のためだけに、ああしていたんですか?」

吉備校長「・・・オヌシと土御門は良く似ているな。同じ質問をされたよ」

ファイテン(澄姫も、なんだ・・・少し嬉しいかな。本人には言わないけど!)

吉備校長「答えは、否じゃ」

吉備校長「報われぬ亡骸に残った想いが集い、動き出したのが、がしゃどくろじゃ」

吉備校長「報われぬ、敬われぬ、埋葬されぬ。そんな亡骸は、毎日のように生み出される」

吉備校長「下手に五重塔のものを完全に滅すれば、次はどこに現出するかわからん」

吉備校長「であれば、力を削いだ状態で管理しておくしかない、じゃろう?」

ファイテン「そうですね・・・すみません」

吉備校長「いや、良い良い。最近オヌシには、惑わせるような出来事が多すぎた。強くなる上では、迷いも大切なものじゃ。その気持ちを、忘れないようにな」

ファイテン「はいっ!」


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