【逢魔時退魔学園】
ファイテン「鬼伝承の成り立ち・・・推測ではある、と前置きされましたが、古くからその土地に住んでいた人たち。その人たちの【討伐】に理由をつける為、後から勝手に【鬼】とされたのではないか。そう、習いました」
百花文「私も同じです。だからこそ、鬼を奉っている土地もある、と」
三善先生「あくまで推測の話だ。実情はわからん。だがな、かくりよの大門が開き、伝承があやかしとなって世に現れるようになった」
三善先生「つまり、そうした憶測も形を取った。鬼の言葉は、ただの残滓(ざんし)に過ぎん」
ファイテン「そうですか・・・良かった」
三善先生「良かった、か。お前らしいな」
ファイテン「あの鬼が・・・鵺のように、誰かの想いを捉えたまま、その地に縛られているのなら、討伐して、いいものなのか。悩んでしまいました」
ファイテン「力のある陰陽師にしか見えないのであれば、他の人に害は加えないはずです」
三善先生「だがな、ファイテン。駿河で討伐した【絡新婦】も元はその地にいた人々だった、と考察されることもある」
三善先生「理解できる言葉を話すから。そこに迷いが生じるのであれば、いずれ付け込まれる。そのことを忘れるな」
ファイテン「はい・・・」
三善先生「では、次にお前がやるべきこともわかっているな」
ファイテン「逃がしてしまった大鬼の討伐、ですね」
百花文「えっ!?」
三善先生「気づかなかったのか、百花。傷つけられた鬼だが、逃げているぞ。霊山に流れる川の上流にな」
百花文「ファイテンさん・・・?」
ファイテン「逃がしたわけじゃないんだけどね。でも・・・追えなかった」
ファイテン「三善先生、もう一度行ってきます。あのとき浮かんだ迷いと一緒に、あやかしを断ち切ってきます」
三善先生「黙っていたことは見過ごせんが、まずは決着をつけてくることだ。あの鬼とも、お前の考えとも、な」
【陸奥霊山 三途上流】
百花文(・・・・・・)
ファイテン「あの・・・怒ってる?文ちゃん」
百花文(決まってるじゃないですか!あんな大事なことを黙ってて!)
ファイテン「うっ・・・ご、ごめんなさい」
百花文(こういうとき、一緒に悩むのも私の仕事なんですから!)
ファイテン「方位師、じゃなくて、私って言ってくれるの、ちょっと嬉しいな・・・ありがとう」
百花文(はいはい。お礼は大鬼を討伐してからですよ)
ファイテン「そ、そうだね。うん」
百花文(ここから先のあやかしですが、傷ついた鬼が歩いて行ったせいか、鬼の気配が感じられます)
百花文(三体で徒党を組んでいないようですが、気を付けてくださいね)
ファイテン「自分でしたことだもの。ちゃんと私がけりをつけないとね!」
先遣隊「急にあやかしの気配が出てきたな。心当たりはないか?」
侍「この河原に私の息子が・・・いる、わけはないのだよな。なあ、見えないだろう?陰陽師」
先遣隊「この奥から濃い瘴気が漂い始めた。気をつけて進むんだぞ」
【陸奥霊山 三途上流 守護者前】
???(追ワレ、討タレ)
???(忌ミ名ト共ニ縛ラレル)
ファイテン「本当は、伝承じゃないのかもしれない」
百花文(えっ・・・?)
ファイテン「ほっとしちゃったんだ。伝承の中から生まれた、って聞いてね」
百花文(・・・ファイテンさん・・・)
ファイテン「式姫とあやかしの元は同じ。でも式姫が人に良くないことをしたとき、討伐してこいって言われたらきっとすごく嫌な気分になる」
ファイテン「元は同じはずのあやかしを討伐するのに、そうならないのは勝手だったのかもね」
ファイテン「元が人だったかもしれない。それだけで、鈍るのも同じ・・・」
???(悪・・・王・・・)
ファイテン「ごめんなさい。こちらから勝手にかくりよの大門を開いて。でも、討たせてもらいます。誰かが悲しい想いをしないように」
ファイテン「そして、あの子へ少しでも近づくために!」
【逢魔時退魔学園】
三善先生「戻ったようだな、ファイテン。首尾はどうだ?」
ファイテン「今度こそ、しっかり討伐してきました。ありがとうございます、三善先生」
ファイテン「今回の【修行】の理由。少しだけわかった気がしました」
三善先生「今はあまり語らなくていい。思う所もあるだろう。しっかり休んでおけ。次の試練も、修行になるぞ」
ファイテン「はいっ!」
吉備校長「・・・話は聞いていたぞ」
三善先生「戻られたのですか、校長先生」
吉備校長「ああ、役人は帰った。幕府との会議も疲れるものじゃな」
三善先生「やはり、真実は明かせそうにないですか」
吉備校長「そうじゃな・・・あれではまだ無理だろう。せめて秘密が漏れないようにせんとな」
吉備校長「かくりよの門は、陰陽師の数だけ開く。つまり陰陽師を根絶やしにすれば、大丈夫。そう考える気の短い者もいるだろう」
吉備校長「陰陽師の保護施設としての退魔学園。その一面は、まだ誰にも教えられぬな・・・」
吉備校長「ワシは万が一に備えてここを開けられん。万が一【攻め込まれた】ときのために」
吉備校長「ファイテンの修行の成果はどうじゃった?鬼の声は届いたかの?」
三善先生「届いたようです。あの子にも、百花にも」
吉備校長「百花とファイテンの相性は思った以上に良いようじゃな」
三善先生「鬼の声が聞こえたのであれば、出羽の霊山で修行をさせた後に・・・?」
吉備校長「ああ、謁見させる必要があるだろうね」
吉備校長「悪路王に・・・」