第21章 信濃:諏訪山村/霧ヶ峰

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【逢魔時退魔学園】

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三善先生「校長先生、戻られましたか」

吉備校長「ああ。留守を任せてしまったな。とは言え、面倒なことになった・・・」

三善先生「ファイテンが閉じている信濃地方のかくりよの門ですか・・・」

吉備校長「信濃龍神も目覚めていない。門が開く要素は薄かったはずじゃ」

吉備校長「最初は幕府の人間が勝手に暴走したと思っておったが、どうも違うな。金山に門が開いたことと言い、幕府はほぼ関係がないじゃろう」

吉備校長「じゃが、人為的であることは疑いようもない、か・・・」

三善先生「悩みの種を増やしてしまうのですが、信濃国に新たな門が確認されました」

三善先生「しかも、今回は厄介な現象も確認されています」

吉備校長「まるでファイテンの力を試すような、いや・・・導くように、か」

吉備校長「ファイテンにはワシが話そう。呼んであるんじゃろ?」

三善先生「はい。お願いします」

・・・・・・

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ファイテン「先生。門が開いたと聞いて・・・って、校長先生?」

吉備校長「ああ、今回はワシが伝えよう。概要は聞いておるな?」

ファイテン「はい。手紙には【信濃国】に新たなかくりよの門が開いた、と」

吉備校長「その通りじゃ。門が開いたのは信濃国にある霧深い山麓。今まで通り・・・と言いたいが、厄介な点があってな」

ファイテン「はあ・・・厄介、ですか?」

吉備校長「瘴気が濃く、辺りの地形が確認できない【瘴気空間】が一部に広がっておる」

ファイテン「地形が確認できないってことは、地図が見れない、ってことですかね」

吉備校長「察しがいいな、その通りじゃ。先遣隊を遣ってはいるが、難しいな」

吉備校長「山麓に向かう前に、まずは瘴気空間を留めねばならん。ワシが結界を張ろう。必要なものは、その他の瘴気に染まった【桃の仙木】じゃ」

ファイテン「えっと・・・その木を持っていけば?」

吉備校長「・・・先遣隊に持たせることも考えたが、少し確かめたいことがある」

吉備校長「【信濃諏訪山村】の探索を頼みたい。考えが当っていれば【桃の仙木】があるはずじゃ」

吉備校長「・・・・・・」

ファイテン「当って欲しくないみたいですね」

吉備校長「そうじゃな・・・だが、確かめんことにはどうにもならぬ」

ファイテン「わかりました。まず調査に向かってみますね」

【信濃国 諏訪山村】

信濃諏訪山村

ファイテン「雨が降ってるね・・・」

百花文(そうですね。身体を濡らすと毒です。こちらで払っておくようにします)

ファイテン「傘いらずなのは便利だけど、あまりいい気持ちではないねー」

百花文(雨と瘴気が関係あるかと思いましたが、そちらは大丈夫みたいですね)

百花文(関係があったら、今頃大変ですし・・・)

ファイテン「とにかく、今は進もうか。私も、確かめたいことがあるしね。色々考えるのはその後だよ!」

百花文(はいっ!そうですね。まずは【桃の仙木】を探してみましょうか)

ファイテン「周りの確認をしつつ、奥に向かってみるねー」

先遣隊「凄い雨だな・・・足下や周囲に注意しろよ?」

村人「この辺は割りと雨が降り易くてね。山道も霧がかってる事が多いよ」

村人「ここんとこ雨続きでねぇ。一日中降りっ放しで夜は凄く冷えるよ」

村人「この間、変な余所者二人組が来てな。かぶ・・・なんちゃらひめ?とにかく相手をそう呼んでたな。あれも陰陽師なのかねぇ」

村娘「山を登るの?この雨のせいでいつもより寒くて、すごく霧が深いから気をつけてね」

行商人「山道には熊がいるそうで・・・霧の中から突然襲われると大変危険ですよ」

村人「この時期は霧が薄くなる筈なんだが、逆に今までより一層濃くて、山に登るのが難しいよ」

村人「普段から山で野良仕事してる村のモンが体調を崩して戻ってきてなぁ。なんかの祟りだろうか?」

村人「あちゃー・・・ここも水が溢れている。何とかしないとお役人に何て言われるか・・・」

先遣隊「この先は霧と瘴気に満ちている。お前程の陰陽師なら問題ないとは思うが、方位師は周囲を視ることが難しいだろう」

村人「最近の大雨続きのせいか水かさ高くなって、半端な橋や柵が流されちまうんだよ」

【逢魔時退魔学園】

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ファイテン「ありました。これですよね、【桃の仙木】って・・・」

吉備校長「間違いない。ご苦労じゃったな」

ファイテン「校長先生の考え、当っちゃったみたいですね」

ファイテン「あの・・・」

吉備校長「これ以上広がらぬように結界は張っておこう。ファイテンは引き続きかくりよの門へ向かってくれ。頼んだぞ」

ファイテン「・・・はい」

【信濃国 霧ケ峰】

霧ヶ峰

ファイテン「ここには雨は降っていないけど、随分と霧が深いね!」

百花文(地図が見れない部分もありますが、そうでなくても視界が悪いですね)

百花文(黄金傘はもう出てこないみたいですが、そこでは山彦が確認されています)

百花文(信濃地方のあやかしは、それまで見られないものが多かった。伝承を元としない、新たなあやかし。そして守護者)

ファイテン「けど、山彦はそうじゃないよね?」

百花文(そうですね。それに、今調べていますが、守護者にも伝承がありそうです)

ファイテン「それじゃ、私がかくりよの門に着くまでに調べておいてね、文ちゃん!」

百花文(はい。ファイテンさんも気をつけてくださいね)

ファイテン「瘴気空間もあるみたいだけど、道は短そうだし!」

ファイテン「いってきまーす!」

百花文(無理しているように聞こえるのは、私の杞憂だといいんですが・・・)

先遣隊「一先ず、これで村は大丈夫だろう。そして、瘴気の原因は山の中だろうから下手に迷うと危険だから気を付けろよ」

村娘?「ちょっと遅かったわよー。変化の術が解けたら、どうしようかと思っちゃった。退屈だった分、後でイタズラしちゃおうかしら?」

【信濃国 霧ケ峰 守護者前】

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ファイテン「文ちゃん。かくりよの門に着いたよ」

百花文(こちらも調べ終わりました。守護者はどうやら【雪入道】みたいですね)

ファイテン「雪・・・?」

百花文(はい。本来であれば雪積もるときに確認されるもののようなのですが・・・)

ファイテン「あやかし相手には、あまりそういうのは関係ないかな?」

百花文(雪入道は言葉の響き通り、火に弱く、水属性に強いみたいです。一撃に注意して討伐してくださいね)

ファイテン「はーい!」

百花文(あやかしだから、なのか。無理矢理引きずりだされたのか・・・力を見れば、わかるかもしれませんね)

【逢魔時退魔学園】

ファイテン 三善

ファイテン「信濃国のかくりよの門、閉じてきました!」

三善先生「ああ、報告は受けた。ご苦労だったな」

三善先生「校長先生も先ほど結界を張り終えた。これで、瘴気はこれ以上広がらぬだろう」

ファイテン「良かった。地元の人に被害があったら大変ですしね」

ファイテン(そんなこと、望んでないはずだし・・・)

三善先生「しかしこのまま進めば、両面宿儺と相対することは間違いないだろう」

ファイテン「この前言っていた鬼神ですね。詳しくはまだ調べきれていませんが・・・」

三善先生「確たる伝承を持つ鬼神だ。時が来るまで、学園でも情報を集めておこう」

ファイテン「はいっ、よろしくお願いします!」

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三善先生「行ったか・・・しかし、あの様子は・・・」

吉備校長「あの子なりに、何か気が付いているのかもしれんな」

三善先生「しかし、私はどうしてもこれが、彼女の・・・土御門の行動だとは・・・」

吉備校長「そうじゃな。ワシとてそう思う。土御門の正義感を考えるとな」

吉備校長「今少し様子を見よう。いずれにせよ両面宿儺に信濃龍神。新たな、そして強大なあやかしは迫っておる」

吉備校長「ここ一連の件はワシがさらに追っておこう。三善先生は、あの子の補佐を頼んじゃぞ」

三善先生「はい、わかりました」

吉備校長「では、またしばらく留守にしよう。その前に、悪と一献傾けておくかな・・・」


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