第26章 関ヶ原 逢魔刻 【解決編】

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【逢魔時退魔学園 裏手】

土御門 ファイテン 校長 三善

ファイテン「ただいま戻りました!ほら、このとーり」

吉備校長「土御門よ、頭は晴れたか?」

………

吉備校長「陰陽師の私闘は厳罰を与えねばならぬ」

三善先生「そうですね、その通りです」

ファイテン「あの、先生も校長先生に掴みかかったんじゃ…?」

三善先生「何の話かわからないな」

吉備校長「ワシも最近は物覚えが悪くてな」

ファイテン「うわ、ずるい…」

三善先生「冗談はこのくらいにしておこう。あれだけ派手にやりあったのだ。示しの為にも、二人にはしばしの謹慎を言い渡す」

吉備校長「期限は、次なる門が開くまでの間じゃな」

三善先生「その間、新たな遠征の案内は行わないようにしておこう」

百花文(結局、いつも通りってことですね。心配したんですから!)

ファイテン(文ちゃん…見守ってくれて、ありがとう。帰ってこれたよ)

ファイテン(かえっ…て…)

(__カラン)

ファイテン「あれ、武器が…あれれ、おかしいな…」

ファイテン「なんで、こんなに震えて…涙まで…」

吉備校長「緊張が解けたか…三善先生」

三善先生「はい」

吉備校長「家まで送ってやってくれ。こういうときは歩いた方が良い」

三善先生「わかりました。ほら、ファイテン。いくぞ」

ファイテン「あっ、すみ__」

吉備校長「土御門にも時間を与えてやれ。先ほどからずっと__オヌシ以上に震えておるわ」

ファイテン「わかりました…」

三善先生「さて、では行くぞ」

………

土御門 校長

吉備校長「震えは止まったか?親友に刃を向けた震えは」

土御門澄姫「…これも、校長先生が経験した震え。ですよね」

吉備校長「二度と味わいたくない、味あわせたくないと思ったが__決意は、揺らぐものでは無いこと、自らのことを忘れておったよ」

土御門澄姫「殺す、って言ったんです。私は…本気で!」

土御門澄姫「ファイテンに!だから!殺さないといけなかったんです!」

土御門澄姫「吐いた言葉に、責任を持つために!」

吉備校長「心にもない理由と刃は、やはり届かぬか…」

吉備校長「いざとなれば止めるつもりじゃったが、その必要もなかったな」

吉備校長(ワシと、同じく…)

吉備校長「【かくりよの大門を閉じる】言葉なら、ワシがここで預かろう」

吉備校長「【救いたい人がいる】という言葉もな…」

吉備校長「辛い思いをさせてしまったの。オヌシにも、あの子にも」

土御門澄姫「一つだけ…訂正させてください。私は、親友ではなく__かくりよの大門に、刃を向けたんです」

土御門澄姫「ファイテンを救いたかったから…」

土御門澄姫「なのに__心も、身体も傷つけて、泣かせてしまって…」

土御門澄姫「うっ…ううっ…ごめん、ごめんね…」

………

悪路王002

悪路王(泉はああ言うが、決意だけではない、そもそもの力量の差、だな)

悪路王(さて。どれほど吾に力が戻ったか…)

………

悪路王003_キラキラ

悪路王「ふむ。劫槍まで顕現出来るようになったか」

悪路王「山俣宿せし大木。何も知らぬ洞だらけの大木」

悪路王「吾が食い破るまで今少し、付き合うとしようか__」

………

校長002

吉備校長(悪よ…青行燈の件、そして信濃国での扇動)

吉備校長(ワシを見くびってのことか、挑発か。どちらにせよ…)

吉備校長(オヌシを見過ごすわけにはいかなくなりそうじゃな__)

【逢魔時退魔学園】

関が原 ファイテン 澄姫

土御門澄姫「………」

ファイテン「………」

土御門澄姫「何よ?」

ファイテン「ううん。べつにー」

土御門澄姫「あれ以来ずーっとこんな感じじゃない」

ファイテン「澄姫を学園で見るのも久しぶりだし…」

土御門澄姫「そうね…私も、またこうなれるとは思わなかったわ」

011.png

三善先生「そこは校長先生に感謝しなければならんな」

三善先生「あの人がどれだけ奔走したか、想像できぬお前でもあるまい?」

土御門澄姫「…はい。そうですね。本当に…」

土御門 ファイテン 校長 三善

吉備校長「改まって礼を言う必要はないぞ。校長として、先達として当然のことじゃ」

吉備校長「時に__ファイテンに土御門よ。時を持て余しておるのなら…」

吉備校長「謹慎中だが、あの地で模擬戦を行ってくれんかの」

ファイテン「えっ!?あそこで、ですか…」

土御門澄姫「謹慎の理由が、そもそも…」

三善先生「まあ、聞いてくれ。謹慎も含め、学園内のこととして収めようとしたのだが__」

吉備校長「オヌシラの戦い。その影響が大きくての…」

吉備校長「陰陽師同士の私闘にすると、幕府が黙っておらぬことになりそうでな」

吉備校長「あれだけの力、幕府に管理させよ、と」

吉備校長「また、ワシの管理不行き届きにも繋がりかねん」

吉備校長(管理不行き届きは否定できぬがな…)

三善先生「まあ、広義では校長先生のせいだが__」

吉備校長「ぐっ…言うようになったの。八重よ…」

三善先生「お前たちにも関わることだ。協力して貰えると助かる」

吉備校長「上の者には『かの古戦場では門の力が大きい。幕府にとっても捨て置けぬ地』『彼の者が蘇った…幕府に不満が…など』『妙な噂が広まらぬよう、定期的に力のある陰陽師が瘴気を散らす』と伝えておる」

ファイテン「はー…な、なるほど…」

土御門澄姫「政治的な話になってしまったんですね。わかりました」

土御門澄姫「これが恩返しになるなら、私は問題ありません」

ファイテン「あっ、私もです!」

吉備校長「そうか、すまんの…彼の地への遠征を許可しよう」

吉備校長「オヌシラの模擬戦は、あくまで瘴気を散らす儀式として、じゃぞ」

吉備校長「強制はせん。時間のあるときに、で良いからな?」

ファイテン「はいっ!」

………

土御門 校長

吉備校長「土御門よ」

土御門澄姫「…模擬戦ですが、大丈夫なんでしょうか」

吉備校長「かくりよの大門。そして悪路の加護のことか」

土御門澄姫「はい」

吉備校長「瘴気を散らす、ということはまんざら偽りでもない」

吉備校長「あの子の動揺は計り知れなかった。強気に振舞ったようじゃが…揺れておったよ。それだけ、オヌシを案じていたのじゃろう」

土御門澄姫「……」

吉備校長「戦いを挑んで来たら、応じてやってくれ」

吉備校長「揺れた隙間に入り込んだものを、散らすことにも繋がろう」

吉備校長「悪路の加護は安心しろ。ファイテンの力を吸うことは無い」

吉備校長「訓練で吸ってしまっていては、日々の鍛錬すら無理じゃろう?」

土御門澄姫「…わかりました。その…」

土御門澄姫「色々、ありがとうございました!」

………

悪路王 校長

吉備校長「オヌシにとっては理想的な展開になっておったようじゃな」

吉備校長「対峙する前に現れた常夜の境も、降雪城址を模したものだったらしいな」

悪路王「随分警戒するようになったな。しかし__眼に意思あれど力無し。加護に意思なくも力有り」

悪路王「吾は見ることしか出来ぬ。少なくとも【吾】はな」

吉備校長「…そうして念を押す以上、含むところがありそうじゃな」

吉備校長「まあ良い。今しばらくはワシも見守る側に回ろう」

吉備校長「確証が持てぬことで動くには早すぎるようじゃしな」

悪路王「鈍った。いや、甘くなったな、泉。__が…先のように念押しする以上、甘くなったは吾も同じか」

吉備校長「それを、時が流れたと言うのじゃ。ワシも、オヌシもな」

【関が原 十九女池】

関が原_澄姫

澄姫?「この先で待ってる、って。久しぶりに、あんないい顔みたわー。ありがとう、ね」


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