【逢魔時退魔学園】
三善先生「【下野国】にある【童子の小江戸】か。話の途中で悪かった。だが、頼まれてくれるか?」
ファイテン「はい、もちろんです!」
三善先生「童子の小江戸の名前の通り、現れるあやかしは鬼が多い。守護者は【百々目鬼】古い伝承をもつ鬼だ」
三善先生「鬼、という伝承は各地に残っているせいか、非常に強力だ。気を付けてくれ」
ファイテン「はい」
百花文(あの・・・さっきの話・・・)
ファイテン「うん、色々考えちゃうよね」
ファイテン「式姫とあやかしは同じ、か」
百花文(言ってましたね。やはり引っかかりますか?)
ファイテン「正直言って少しね、でもちょっと違うかな。この子たちはいい子だよ。少なくとも人に迷惑は・・・いや、うーん」
ファイテン「うん、一般の人には迷惑はかけないし、かわいいし、話してて楽しいし!」
ファイテン「私たちが討伐しているあやかしとは、やっぱり違うものだよ」
百花文(そう言い切ってもらえる、あなたの式姫は幸せだと思います)
【下野国 童子の小江戸】
百花文(その町は、もともと宿場として賑わっていたそうですが、今は・・・)
ファイテン「そりゃ、あやかしの出る町で休もうとは思わないしね」
百花文(・・・そちらのあやかしは鬼が多いみたいですね)
百花文(弱点もないそうですので、最大の力が発揮できるように指揮してあげてください)
ファイテン「うん、任せておいて!」
先遣隊「ここのあやかしは強力だ。気をつけてくれ!」
主の娘「あやかしは怖いけど、あまり人を襲わないの。なんでだろう?」
本陣の主「町にあるものは何でも使ってくれて構わん。頼んだぞ」
先遣隊「ここまで来れるということは、お前の力は私より上なのだろうな・・・」
先遣隊「鬼は数も多い。武器もそれを使う手も足りないぞ!」
町の用心棒「この先から不気味な呻き声がするんだ・・・」
【下野国 童子の小江戸 守護者前】
ファイテン「百々目鬼という言葉の響きだけだと、目が一杯ある鬼を想像しちゃうね」
百花文(名の通り百の眼をもつ鬼でありますが、女性の姿をしているようですね。いくつかの伝承が残っていますが、共通点は若い娘の姿みたいです)
ファイテン「若い娘かあ。知っている人に似ていたら、やりづらいなあ」
百花文(見た目はともかく、体にある鬼の目が弱点らしいですよ。頑張ってください)
ファイテン「うう。なるべく顔とかは気にしないで戦おう」
【逢魔時退魔学園】
ファイテン「三善先生、ただいま戻りました」
三善先生「百々目鬼も倒せるようになるとは、本当に大きくなったな・・・」
三善先生「校長先生がお待ちだ。以前と同じように逢魔時退魔学園裏手まで頼んだぞ」
ファイテン「はい、わかりました」
【逢魔時退魔学園裏手】
吉備校長「話の続きの前に、間が空いてしまったな」
吉備校長「門を閉じてもあやかしが消えないのは何故か・・・受けていた質問はこれじゃったな」
吉備校長「それに対して、まずはあやかしと式姫の関係について答えた」
ファイテン「あの・・・成長から言ってそろそろ・・・って一体どういう・・・」
吉備校長「逆に問おう。おかしいと思わなかったか?やけに順序良く門が開くと」
ファイテン「それは・・・そういうものかと思っていました!」
吉備校長「・・・・・・」
吉備校長「受け入れることも強さではあるが・・・まあ、よいか。うん、よいよい」
吉備校長「かくりよの門はな、陰陽師の数だけ開くんじゃ」
ファイテン「えっ、ええええ!?」
吉備校長「正確には、式姫を召喚した陰陽師の数、じゃな」
吉備校長「式姫を契約するということは、かくりよから呼び出すということじゃ。かくりよにおる他のあやかしはこう思うじゃろう・・・自分もうつしよに出たい・・・とな」
吉備校長「だから、かくりよの門を開いて陰陽師を呼ぶ。殺して契約を乗っ取るために」
吉備校長「契約を乗っ取るに相応しいと思った陰陽師になるたびに、な」
吉備校長「かくりよの門は、陰陽師の数だけ、その陰陽師の為だけに開くものじゃ。自然、門を閉じるのもその本人にしかできぬ」
吉備校長「下野の百々目鬼も、そろそろと思っておった。オヌシらの成長具合から見て」
土御門澄姫「じゃあ・・・あたしたちは、ただあやかしを増やしているだけ・・・?」
三善先生「いや。それは断じて違う。門が開けば、多くのあやかしが出てくる。門を閉じても無数に残ってしまうが、これ以上は増えない、というのは重要だ」
三善先生「京都に開いたかくりよの大門。それを閉じることのできる陰陽師を育てる・・・それが逢魔時退魔学園の目的だが、もう一つ隠された目的がある」
三善先生「陰陽師が増えるのを制限するため・・・無数に門が開くのを防ぐため・・・一人でいい、増えるかくりよの門を乗り越え、大門に到達できる陰陽師。【諦めた】【歩みを止めた】陰陽師や武人が後進に託すための場所、それがここだ」
三善先生「強さに応じて門が開くのであれば、立ち止まれば被害はこれ以上増えない」
三善先生「各地にいる先遣隊や、私を含む教師は、いずれも歩みを止めてしまった人間・・・誰かが止めねばならない、でもその誰かは自分ではないと悟った・・・だから、その誰かを育てるために、恥を忍んでここに残っている」
吉備校長「オヌシらに問おう」
吉備校長「大門を目指して歩み続けるか、それともここで足を止めるか。時間を取って考えるが良い」