第8章 相模:一宮神社(学園の秘密その1)

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【逢魔時退魔学園】

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吉備校長「三善先生から聞いたぞ。かくりよの門に関して、疑問を覚えたようじゃな」

ファイテン「はい。と言っても‘こういうものだ’と言われたら納得しそうですが」

吉備校長「オヌシは納得しても、そちらが納得すまい。のう、土御門よ」

土御門澄姫「はい、あたしは納得のいく説明が欲しいです」

土御門澄姫「土御門の一門も、各地であやかしと戦っていますが一向に数が減りません。あたしが閉じた門を、既に閉じていた一族の者もいます」

土御門澄姫「こうして戦うことに、本当に意味があるのか、教えてください」

吉備校長「奇しくもオヌシら二人が同じ疑問を・・・か」

吉備校長「いいじゃろう。ちょうど、新たな門が開いたとの報告があった」

吉備校長「【相模国】の【一宮神社】より戻ったら、その疑問に答えようではないか」

土御門澄姫「今ここでは、ダメなのでしょうか」

吉備校長「ファイテンも土御門も、事実を受け入れる器を見せてからじゃ」

土御門澄姫「あたしだけに教えるということも?」

吉備校長「ほっ。食い下がるのう・・・力量が変わらぬオヌシだけに教えることはない」

土御門澄姫「くっ・・・あたしとファイテンの力が同じと言うのですか!使える式姫の数だって段違いなのに」

吉備校長「断言しよう、大差ない。このワシから見ればな。違うというのなら証明してみせよ。土御門の者よ」

土御門澄姫「・・・失礼します!」

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百花文「完全に置いてけぼりでしたね・・・」

ファイテン「なーんか失礼なことも言われてたけど、口を挟めなかったね・・・」

吉備校長「土御門は行ってしまったが、ファイテンはどうする?」

ファイテン「行きますよ。質問もそうですが、言われたままなのもイヤですしね!」

吉備校長「うむ、それでよい・・・無事を祈っておるぞ」

【相模国 一宮神社】

一宮

ファイテン「これはまた、険しそうな山道だね」

百花文(ええ。私は自宅待機の方位師で本当に良かったと思っています)

ファイテン「それ漁村のときも言ってたよね!?山も海もどっちも苦手とか!」

百花文(正確には私は外が苦手なのです。身体のせいもありますしね)

ファイテン「あっ・・・そっか。ごめんね」

百花文(いいえゴフッ!べついゴホッ!気にしてませんからゴボッ!)

ファイテン「うん、気にしてないみたいだからいっか」

百花文(本当に慣れてしまいましたね・・・少し、寂しいです)

ファイテン「でも、少し気分は楽になったかな。ありがとう」

百花文(どういたしまして。ですよ)

百花文(守護者は【骨武者】あやかしは【骨】が主体みたいです。隙間が多いせいか、突く攻撃は通じにくいですよ)

ファイテン「どちらかと言えば叩き割る方がよさそうだね」

百花文(あんまり想像はしたくないですけどね)

ファイテン「いや、想像じゃなくて、これから実際に戦うんですが!」

旅人「知り合いが帰ってこねえんだ・・・ちょっと見てきてくれねぇか?」

武士「骨の使ってる武器、どこから手に入れたんだ」

先遣隊「あやかしの力も徐々に強くなってきているな」

旅人「見事な滝だなぁ・・・これでかくりよの門でも流してくれりゃぁな」

先遣隊「あやかしの討伐こそが我らが使命!」

迷い人「どうやってここに出たんだ、オイラは・・・」

先遣隊「これだけ神代のものが多いところにも、門は開くのだな・・・」

先遣隊「武器が打ち捨てられているな・・・よく探してみるといい」

【相模国 一宮神社 守護者前】

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ファイテン「骨のあやかし、随分と手ごわかったね・・・」

百花文(そろそろ、式姫の装備の属性にも気を付けた方がいいかもしれませんね)

ファイテン「ここの守護者は【骨武者】だっけ」

百花文(はい、そうです。これまでの道のりを思い出すとあの骨を統率している以上、かなりの強さと考えて良さそうですね)

ファイテン「かなりの強さ・・・かあ」

ファイテン「ねえ、文ちゃん?」

百花文(なんでしょう?)

ファイテン「先遣隊の人たちや先生が、守護者を討伐しない理由ってなんだろうね」

百花文(先生方は学園を守らなければいけませんし、先遣隊も、迷い込まれた方の保護や、あやかし討伐などの任務があります)

百花文(自由に動けるものが討伐する、それだけじゃないですかね)

ファイテン「自由に、かあ・・・本当に、それだけの理由なのかな?」

ファイテン(雷獣は、澄姫も討伐したと言っていた。私も討伐をしたのに・・・門が開く時期とか、先遣隊の人たちが既に待機していることとか・・・なにか、あるような・・・)

【逢魔時退魔学園】

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ファイテン「ただいま戻りましたー!」

吉備校長「報告は受けて折るよ、ご苦労じゃった」

土御門澄姫「土御門澄姫、戻りました」

吉備校長「土御門もほぼ同時か・・・けしかけた以上、もっと急ぐかと思っておったが。どうやら道すがらの試練も、全て達成してきたようじゃな」

土御門澄姫「困っている人を見過ごすのはイヤなんです。負けることもイヤですけど・・・」

吉備校長「はっはっはっ。それでいい。その正義感故の疑問だっただろうしな」

吉備校長「別にオヌシはファイテンに負けているわけではない。まあ、勝ってもおらぬがな」

土御門澄姫「ぐ、ぐうぅ・・・」

ファイテン「あの、澄姫・・・?なんで泣きそうに・・・」

土御門澄姫「泣いてないわよっ!ううっ・・・ぐすっ・・・」

ファイテン「わっ、ごめん!なんか藪蛇!」

吉備校長「ちょっとワシもいじめすぎたな・・・これはすまん」

吉備校長「まあ・・・ここは人も多い。【逢魔時退魔学園裏手】にきてくれんかな」

土御門澄姫「裏手と言われても・・・」

吉備校長「場所はファイテンが知っておる。そうじゃろう?」

ファイテン「えっ、多分・・・」

ファイテン(あそこのことだよね。校長先生、知っていたんだ」

吉備校長「ワシの式を待たせておこう。準備ができたら、来るが良い」

【逢魔時退魔学園裏手】

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吉備校長「来たか、二人とも」

ファイテン「校長先生に・・・」

土御門澄姫「三善先生も・・・」

三善先生「ファイテン。この場所を知っていたのだな?」

ファイテン「はい・・・」

吉備校長「それだけではないぞ。ファイテンは封じられしものと手合わせしたこともあるからな」

三善先生「なんだと!・・・ああ、もう頭が痛い・・・」

土御門澄姫「あの、この場所は?」

吉備校長「ここにはな、とあるモノが封印されておるのじゃ」

吉備校長「本来であれば、ワシと一部の人間しか発見できぬ場所なのじゃが・・・」

吉備校長「まあ、こうした内緒話には適した場所じゃ。それ以上でもそれ以下でもない」

吉備校長「ファイテンを見かけたときは、肝が冷えたが・・・」

吉備校長「あやつの封印はワシが厳重に行っておる。危険はない。今後も自由にするがよい。だが、ほどほどにしておくのだぞ?」

ファイテン「はーい」

吉備校長「さて・・・どこから話すべきか・・・そうじゃな、まずは歴史からいこうか。三善先生」

三善先生「二人は、あやかしがうつしよに現れ始めた頃を学んだな?」

土御門澄姫「はい。十数年前突如として現れた、と」

ファイテン(あっ、そう言えばそうだった・・・のかな?でもその前から居たような・・・?」

三善先生「そう。かくりよの門が、うつしよに現れ始めたのがちょうどその頃。各地で一斉に開いた門からは、あやかしがあふれ始めた」

三善先生「それを抑えるために建立されたのが、この逢魔時退魔学園になる」

三善先生「さて、結論を言ってしまえば、かくりよの門はかくりよの門が開いたから開いたのだ」

ファイテン「えっ・・・?あの、原因がかくりよの門で理由がかくりよの門が開いたって、その・・・」

三善先生「京都に出現した規格外の門。仮にそれをかくりよの大門としよう。その大門が開かれたことが、現在の状況に至った原因だ」

吉備校長「土御門なら、式姫との契約の原理を知っておろう?」

土御門澄姫「はい。一家のものとして学びました。曰くかくりよの住人を、型紙を依り代として契約を結んだ存在、それが式姫です」

吉備校長「正解じゃ。つまり、あやかしと式姫は大本は同じもの、となるな」

吉備校長「元々陰陽師は契約を交わした式姫を召喚し、それによって世を支えてきた。平安の時代には、己の式姫を競わせていた陰陽師もいたらしいな」

ファイテン「式姫が、あやかしと同じ・・・」

吉備校長「ファイテンは知らぬ。いや、大多数の陰陽師はそれを知らぬ。知っているのは陰陽道の大家のみであった。内密に頼むぞ、このことは」

ファイテン「は、はい・・・」

吉備校長「式を通じて、このことを聞いている百花もな」

百花文(ゴフッ・・・は・・・ゲホゲホ・・・はい)

吉備校長「うむ、それでよい。さて、契約は祠にて封印を解き、自らの力によって従える必要がある。これは今と同じじゃな」

吉備校長「だがある時、桁違いの式姫と契約しようとし、大門を開いた陰陽師がいた」

吉備校長「大門の力は強大だった。かくりよの者を、契約なしでうつしよに溢れさせるほどにな」

ファイテン「でも。式姫とあやかしが同じと言っても姿も名前も違うような・・・」

吉備校長「式姫の召喚と契約には型紙が必要だ。逆に言えば型紙がなければ召喚ができない。契約もないのに無理にうつしよに出ようとし、媒体となる型紙の代わりに伝承されている妖怪の姿をかり、その言い伝えを触媒としたのがあやかしじゃ」

校長の式「ご主人様。学園に急報です。新たなかくりよの門が確認された、と」

吉備校長「・・・やれやれ、オヌシラの成長からいってそろそろと思っていたが、唐突じゃな」

ファイテン「あたしたちの成長で・・・?」

吉備校長「すまんが続きは後じゃ。まずはそちらを頼む。かくりよの門を放置して、いいことなど何もないからな」

土御門澄姫「わかりました。戻ってきたらまた続きを聞かせてください」

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ファイテン「なんか、すごい話だったね」

土御門澄姫「式姫のことは知っていたけれど、門を開いたのは同じ陰陽師だったのね」

土御門澄姫「とにかく、今はできることをしましょうか。負けないわよ、ファイテン」

ファイテン「別に勝負しているわけじゃないんだけどな・・・」


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