第22章 飛騨 出羽ヶ平

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【逢魔時退魔学園】

ファイテン 悪路王

悪路王「以前いったな、お前は信仰を斬らねばならぬかもしれん、と」

ファイテン「はい」

悪路王「両面宿儺は吾と似た発端だと言われている。つまり時の支配者の地方制圧。それを正当化するために歪められた存在だ」

悪路王「歴史上では吾よりも古い。だが、両面宿儺にはもう一面が大きくてな。曰く、黒龍を単身で討伐した英雄、寺院に祀られている場所もある」

悪路王「吾よりも、崇拝、土着信仰の側面が強い。もっともそれはここ最近、数百年のことだ」

ファイテン「ここ最近で数百年って、ちょっと想像が沸きにくいですね」

悪路王「まあ、聞け。新たな伝承はその分土地の人々の記憶に残る。土地から人が消え、霧散することも少ない。かくりよの大門の影響を受けたのもそのせいであろうな」

ファイテン「悪路王さんと成り立ちが似ている、それとあの村には関係があるのですか?」

悪路王「土着の英雄、祀っていた神がその社に顕現した。それだけで、その土地に住まう者にとっては大きな希望となろう」

ファイテン「あっ・・・・・・」

悪路王「かくりよの門は災い。だが、両面宿儺はあの者共にとっての希望だ」

悪路王「耳を貸すな、とは言わん。言葉は染み行くものだ。だが、心まで言葉を浸すな。信念を持って、先に進め」

ファイテン「はい、わかりました」

【飛騨国 出羽ヶ平】

飛騨出羽が平

ファイテン「・・・考えちゃうね、どうしても」

百花文(信仰・・・希望、ですか)

ファイテン「かくりよの大門の影響で顕現し、もし悪意がないのであれば。そのままにしておくのも、ありなのかな、ってね」

悪路王「・・・・・・」

百花文(その、ファイテンさん・・・)

ファイテン「大丈夫だよ、文ちゃん。もしも、とか考えるよりはまずは進んで、実際に会ってみないと」

百花文(はい・・・)

悪路王「【払子守・ほっすもり】には気をつけろ。今までのあやかしとは若干ことなる」

悪路王「追い詰めずも全体への攻撃を使い、逆に追い詰めればその攻撃を使わぬ。対処の手順を勘違いせぬようにな」

ファイテン「はいっ!」

先遣隊「普段の格好では怪しまれてな…両面宿儺が奉られている社はこの先だ」

村人「これ以上は何もしないでくれ!助けてほしいときはそう言う!」

行商人「両面宿儺を崇める村人は多いですが、お参りに社へ行く方は少なかったらしいです。増えたのはごく最近のようですよ」

侍「どうにも村人が頑ななのだ。これもかくりよの門の影響なのか…?」

村娘「最近神様が来てくれたって、村のみんなが騒いでいるの」

村娘「行かないでください。お願いです。そっとしておいてください!」

村娘「昔、女の人が、亡くなった自分の子を湖に沈めたんだって。以来、湖はどんなに雨が降ったりしても何も起きないの」

社の住人「この地は両面宿儺様がおられる土地。何用がしらぬが、討伐するというのであれば…」

【飛騨国 出羽ヶ平 守護者前】

ファイテン 悪路王2

両面宿儺「参ったか、新参者よ」

悪路王「吾を新参と呼ぶか。飛騨の鬼神」

両面宿儺「時が許せばお主とは語りあいたいこともあった。だが、今は違う」

両面宿儺「前に出よ、我を討伐せんとする陰陽師よ」

ファイテン「・・・はい」

両面宿儺「土地の者の言葉を詫びることはせぬ。我が詫びてよいことでもない」

両面宿儺「我を、討伐しに来たのだろう?」

ファイテン「は・・・あっ、いえ。まずは会話から・・・」

両面宿儺「甘いわ!」

ファイテン「うっ・・・ぐ・・・」

悪路王「そう脅かすな、両面宿儺。内面の力あれど、まだまだ、吾らに比べれば木端のような小娘だ」

両面宿儺「随分と優しいのだな、悪路王よ。・・・まあよい」

両面宿儺「娘よ、我は人の信仰により再び姿を取った存在」

両面宿儺「なるほど今の我の思考は澄み切って民のことを考えておる」

ファイテン「・・・はい」

両面宿儺「だが、忘れるな。民の信仰は簡単に捻じ曲がることを」

両面宿儺「力を持つ我が顕現したことで、よからぬことを考える者も居よう」

両面宿儺「信仰が歪み、我が歪む。それは到底看過できぬ、が、我には自らを殺すことはできぬ。それは全てへの裏切りだ」

ファイテン「あなたは・・・それでいいんですか?」

両面宿儺「我、か・・・」

ファイテン「英雄として祀られた方が、あやかしとして討伐される。それは耐えられるのですか?」

両面宿儺「もう我を討伐できるつもりか。まあ、お主ならそれも出来よう」

両面宿儺「聞け、ファイテン」

ファイテン(名前、を・・・?)

両面宿儺「我は飛騨の地を、住まう者すべてを愛している。こうして顕現し、再びこの地に息づくことができたことを感謝している」

両面宿儺「だからこそ」

両面宿儺「変質することを見過ごせぬ。到底看過できぬ」

両面宿儺「我を討伐し、その力を削ぐのだ」

両面宿儺「大門の影響や、信仰の変質を受けても、歪まぬように、な・・・」

ファイテン「・・・わかりました」

両面宿儺「かくりよを求め、奔走する小さき者よ。身に不相応な力を秘めし者よ。抵抗はしよう、お主の力を見るために。さぁ、来るがいい」

両面宿儺「鬼神【両面宿儺】が相手となろう!」

村娘「なんてことをしてくれたの・・・勝手に!考えもせず!

村娘「・・・出て行って」

村人「どうして・・・どうしてだ!何をしたって言うんだ!」

村人「来年不作になって・・・黄泉路を行くものがでたら、それはお前たちのせいかもしれんな」

村人「こういうことだったのか・・・帰ってくれ!顔も見たくねえ!」

村の庭師「討伐してしまったようですね・・・ですが、木々は生き生きとしたままです。これは、どういうことでしょう・・・?」

村人「こんなことになりそうな気はしてたさ。あまり、気に病むんじゃねえぞ?」

村人「蜘蛛よりも鬼よりも、怖いのはお前たちだったのか!」

村娘「・・・来年、不作だったら、奉公に出されちゃうんだって・・・どうして、こんなことになったの?」

村人「地方の者の声は聞かずに踏み潰す。ああ、幕府もそうなら陰陽師もそうだったか」

村娘「神様が消えたってみんな嘆いているけど、最初からそうだったじゃない・・・おかしいわよ、こんなのは」

村娘「どうして・・・そっとしておいてくれなかったんですか」

社の住人「村の者には私から時間をかけて説明しよう。両面宿儺様の望んでおられたことも、な・・・」

【逢魔時退魔学園】

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吉備校長「・・・戻ったか、ファイテン。悪は、離れているようじゃな」

ファイテン「はい、ただいま戻りました」

吉備校長「両面宿儺の力と信仰は強い。討伐しても完全に消えることはなかろう」

吉備校長「だが、これ以上力を蓄えることも無い。ご苦労じゃった」

ファイテン「飛騨の地を愛している、と言っていました」

ファイテン「どうしても、それが忘れられません。かくりよの大門を閉じたら、あの人の・・・」

吉備校長「そうじゃな。存在は消えよう。じゃが、残るものもある」

吉備校長「信仰は消えん。そして、お主に語ったことも、な・・・」

ファイテン「はい」

ファイテン 悪路王 校長

悪路王「ファイテンに泉か。少し遅くなったな」

吉備校長「悪か。ファイテンには甘いお主のことじゃ。どうせ、両面宿儺と話をしてきたのじゃろう?」

悪路王「言葉に棘を含めるな。酒を交わしたのは本当だがな」

ファイテン「悪路王さん?」

悪路王「両面宿儺から伝言だ。大門を閉じること、楽しみにしている、と」

悪路王「名にかけて、お前が門を閉じるまで、変質することはない、ともな」

吉備校長「大分気に入られたようじゃのう」

悪路王「それと、もう一つ。手合わせならばいつでも応じよう。今度こそ相応の力を持ってファイテンの糧となろう。いつでも来い、と言っていたぞ」

ファイテン「は・・・はいっ!ありがとうございます」

悪路王「良い。行け、ファイテンよ。方位師が家で待っているぞ」

ファイテン「はいっ!失礼します!」

悪路王 校長

吉備校長「・・・本当に甘いな。オヌシは」

悪路王「さて、何のことやら。吾は吾の望むまま、よ」

吉備校長「・・・今の人払いもか?」

悪路王「聡いな、いや、さすが、か。両面宿儺の地より戻るときだ」

悪路王「吾の加護が一際強く引き出された。安倍・・・いや、土御門だな」

吉備校長「・・・まだ内密に頼む。確認せねばならぬことが多すぎる」

悪路王「そのつもりだ。単純にあの娘が加減を誤った可能性もある」

吉備校長「学園としても行方を追う。幕府に勘ぐられる前に、な」

悪路王「そうか、姿を消したのか」

吉備校長「ああ・・・土御門澄姫が、本家から出奔したと報告があった」


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