第11章 駿河:蠱毒の社

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【逢魔時退魔学園】

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三善先生「次の試練だが・・・少し今までとは異なったものになる」

百花文「含みがありますね・・・何か変わった試練なのでしょうか?」

三善先生「今回の遠征先は【駿河国】の【蟲毒の社】だ」

ファイテン「かくりよの門を閉じればいいんですよね?今までと変わらないような・・・」

三善先生「この土地だがな、実はかくりよの門ではないのだ」

ファイテン「えっ!?」

三善先生「かくりよの門より現れたあやかしは人をあまり襲わない、それは今までで知ったな?」

百花文「はい。もちろん、そうじゃないのもいますけど、基本的にはそうでしたね」

三善先生「だが、ここは少し事情が異なる。元々は土蜘蛛を祀っていたのだが、【かくりよの大門】が開いた直後、溢れた瘴気で土蜘蛛が変質したのだ」

三善先生「・・・その社にいた人間全てを犠牲にしてな」

百花文「全て、ですか・・・」

三善先生「そうだ。もともと地元の人間しか知らぬような社だったため、幕府が秘密裏に処理を行った」

三善先生「かくりよの門より溢れてくるあやかしも、いつこうなるかわからない。今後のこともある、遠征して確認してくるといい」

ファイテン「はい・・・わかりました」

百花文「あの、三善先生」

三善先生「どうした、百花」

百花文「土蜘蛛の討伐はされなかったのでしょうか。幕府が出てきたのなら・・・」

三善先生「長い信仰の後、力を付けたあやかしだ。討伐しても、何度も復活してきてな・・・幕府も、今では役人を一人、入り口においているだけだ」

三善先生「だが、討伐するごとに瘴気が薄まることは確認されている、頼めるか?」

ファイテン「もちろんです!」

三善先生「土蜘蛛は強い力を持つが火に弱い。属性をよく考えるんだ。また、この遠征は利根の領域を超える。出てくるあやかしもさらに強力だ。力不足だと感じたなら、装備や自身の強化。式姫の強化のために鍛錬を積むのだぞ」

ファイテン「わかりました」

三善先生「最後になるが蟲毒の社では、生きている人間は誰一人として確認されていない」

三善先生「入り口で見張っている役人以外は、な」

ファイテン「誰一人として・・・」

三善先生「いるのは、一度命を失ったものを、土蜘蛛が信仰の為に傀儡(くぐつ)

にしている者だ。心を、揺らさぬようにな。信じているぞ、ファイテン」

【駿河国 蟲毒の社】

蟲毒の社

ファイテン「静かだね、文ちゃん」

百花文(そうですね。風の音以外、何も聞こえません)

ファイテン「三善先生は・・・心を揺らすな・・・って言ってたけど、大丈夫かな・・・?」

百花文(はい。ファイテンさんなら大丈夫ですよ。これまでずっと、鍛錬を積んできたんですから!)

ファイテン「うん、ありがと。文ちゃん」

百花文(式を通じてその土地のあやかしが強力なのは伝わってきます。三善先生の言う通り、討伐には入念な準備が必要そうですね)

百花文(この国にある祠の守護者討伐なども、考えた方がいいかもしれません)

ファイテン「うん。先に進むと決めたんだし・・・頑張らないとね!」

幕府の役人「ここから先に生きている人間はいない。・・・ああ、いないんだよ・・・」

社の住人「お参りの方ですか?ここは土蜘蛛様を祀っているんですよ」

少女「正面の山道は門が閉じられているので、本堂へは庭園側を回ってからお願いしますね。いい景色なので、散歩にもちょうどいいですよ!」

少女「これは枯山水といって、水や夜空の星を表しているそうです。綺麗ですよね」

修行中の少女「ここは静かでしょう?修行や信仰に集中できる、いい社だと思います」

虚ろな少女「私、何をしようと・・・?」

修行中の少女「陰陽師の方ですか?私も今、修行中なんです。頑張りますよ!」

社の住人「遠回りをさせてしまいましたね。でも、いい景色だったでしょ?」

記憶を残した行商人「・・・六文銭以上お金を貯めてもな・・・ここからは、出られんぞ・・・?」

翡翠の髪飾りをした少女「本堂はこの先だね!あなたは何をお祈りするのだろう・・・?私は、お父さんのこと、かな!」

【駿河国 蟲毒の社 主の前】

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ファイテン「・・・・・・」

百花文(あの、ファイテンさん・・・?」

ファイテン「ううん。今は、いいや。まずは、ここの主を討伐しないと」

百花文(えっと・・・恐らくですが、主は絡新婦(じょろうぐも)

。土蜘蛛を産み、束ねるあやかしです。土蜘蛛と同じく火が弱点なので、そこを突くといいと思います)

ファイテン「ありがとう。それじゃ、行くね!」

【逢魔時退魔学園】

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三善先生「戻ったか、ファイテン」

百花文「おかえりなさい。ファイテンさん」

ファイテン「ただいま戻りました、三善先生。それに、文ちゃんも」

三善先生「声が沈んでいるな。気持ちの方は大丈夫か?」

ファイテン「はい」

三善先生「いつ、他のあやかしもあのように変質するか分からない。社の光景を、忘れずに先に進んでくれ。決意が鈍ったならば、それはそれで仕方のないことだ」

三善先生「ファイテンは、あの光景を見てどう思った?」

ファイテン「怖くなりました。あの社みたいに、いつか自分も、とか考えて・・・」

百花文「ファイテンさん・・・」

ファイテン「かくりよの大門まで、私なんかじゃ辿り着けないんじゃないか、って」

三善先生「では、ここで歩みを止めるか?校長先生も言っていたが、それも選択だ」

ファイテン「けど、私は・・・私は、決めたことは曲げません。このまま前に進みます!」

ファイテン「やっぱりあの子に会いたいのもありますが、もう一つ理由ができました」

ファイテン「これ以上、あんな悲しい場所を増やしたくないです!」

三善先生「そう、か・・・」

三善先生「お前は、乗り越えたのだな」

三善先生「・・・・・・」

三善先生「よく頑張ったわね、ファイテン」

三善先生「教師としても、個人としてもあなたを労います。乗り越えてくれて、ありがとう」

ファイテン「はいっ、八重さん!」


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