第38章 豊前:宇佐神宮

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【逢魔時退魔学園】

ファイテン「よーし、じゃっ行ってくるかな!」

吉備校長「…随分と暢気な出立じゃな。向こうで何が起きとるか、わかっておるか?」

ファイテン「重々承知の上です!確かに幽世が九州で現れているのは拙い状況ですが、出発前から悩んでも仕方がないですし!」

百花文「…家にいる時からこんな感じなんです」

ファイテン「大丈夫だって文ちゃん!四国の時も幽世に行ったけど、そんなに不気味な感じじゃなかったし、ね!」

吉備校長「胆が据わっとるのか、楽天的なのか…」

百花文「恐らく両方かと…」

吉備校長「じゃがファイテン、あの後、現地から入った報せによると、幽世側から瘴気が入ってきており、幽世と繋がる場所では広がりつつある…」

ファイテン「早々に、現地に行ってその瘴気の元を断たなければいけないんですね」

ファイテン「ならば私は急いで向かいます」

吉備校長「…事態が事態じゃからこそ、急ぐ、か」

吉備校長(やはり、そっくりじゃな。オヌシの母に…)

ファイテン「そういえば、あれから学園で澄姫の姿を見ませんが、どうしてますか?」

吉備校長「土御門には別の調査を任せてある。自分も早く幽世へ至れるようになりたいと意気込んでおるぞ」

吉備校長「そうそう、オヌシに伝言じゃ。『幽世で会いましょう』とな」

ファイテン「あ、あんまり幽世側では会いたくないなぁ」

ファイテン「でも澄姫も頑張ってるなら、負けてられないな!私もそろそろ、出発することにします」

吉備校長「ファイテン、言っても無駄かもしれぬが、…無理はせぬようにな」

ファイテン「わかってますよ!」

百花文「ちゃんと私も見ていますので」

………

悪路王「そうか。話したか。…あれの呼び名を」

悪路王「国造…だったか?」

吉備校長「うむ。九州に行くとなっては、昔の話をせぬわけには行くまい」

吉備校長「…運命の悪戯と言うべきか。はたまた、必然と言うべきか」

悪路王「それは今考えても詮無きことだ」

悪路王「事態がこうなった今、この時期にあの地へ赴くことは、ファイテンにとってもそう悪いことではあるまい」

吉備校長「そうじゃな。母の道程を辿るのは、過酷な道かもしれんが、黙っていても、いずれは、ファイテン自ら望んだであろうからの」

三善先生「泉先生、お話があります」

吉備校長「八重か。どうしたのじゃ?」

三善先生「九州各地で起きている件に関して、幕府側も事態を重く受け止めているようです」

吉備校長「…ほう」

三善先生「こちらから人手を借りる要請をする前に、幕府側から提案がありました」

三善先生「向こうとしても、できる限りの助力を惜しまぬ考えだそうで…」

三善先生「人を集め次第、幽世と繋がった現地の封鎖にも協力する、とのこと」

吉備校長「なるほど。四国の際にも、封鎖には人手を借りたが__」

三善先生「それはこちらより申し出たことです」

吉備校長「うむ。事態は深刻じゃから当然と言えば当然じゃが…」

吉備校長「何か腑に落ちぬな」

三善先生「はい…私も同じです。何度か説明を求めたのですが__戻ってくる回答は同じでした」

悪路王「…嫌な臭いがするな」

悪路王「吾の戦の時もそうであった」

悪路王「中央というものは、最初は姿を隠して近づいてくるものよ」

三善先生「……」

三善先生「とりあえず、何か動きがあればすぐに知らせるようにします」

吉備校長「ああ、頼んだぞ」

【豊前国 宇佐神宮】

ファイテン「ここが神宮の入り口かあ」

百花文(日本の中でも大きな神宮ですから、土地は相当広いようです)

百花文(どうですか?既に瘴気が感じられますか?)

ファイテン「少ーしね。でもそれを除けば、綺麗な神宮だよ!」

ファイテン「ここまで来るのに、色々と目にしてなければこの奥で幽世と繋がってるなんて、信じられなかっただろうなぁ」

百花文(瘴気の影響…ですね)

ファイテン「うん。人々の諍いがいろんな所で起こってた」

ファイテン「瘴気によって、人にそんな影響が出るなんてね」

百花文(古代の戦場が再現しつつある…もしかすると、それと関係あるのかもしれません)

百花文(戦は、憎しみによって生まれ、新たな憎しみを生み出すもの)

百花文(戦場に関連のあるあやかしがいるとすれば…その瘴気が生み出すものにも頷けます)

ファイテン「人々の憎しみ…か」

ファイテン「うん、早く幽世側へ行って、その瘴気の原因をなんとかしないとね!」

百花文(報告によると、奥に見慣れない穴が出現したらしく__そこから幽世に繋がっているようです)

百花文(恐らくそこからあやかしも出てきているので、十分気をつけてください)

ファイテン「わかった!ありがとうね。まずはその穴を目指して、行ってくる!」

先遣隊「先へ進む前にしっかりと準備しておけ」

旅人「水面を見ていると、何故か不安になってくるな…」

旅人「景色は綺麗なのだが、何かがおかしいような…」

旅人「疲れているのだろうか…木の枝が、何故か別のものに見えるときがあるのだ…」

旅の修行僧「この先からは神聖とは真逆なものを感じるが…先へ進むのであれば、注意されることだ」

お坊さん「いつもは行商人の方が来ているのですが、今日はやけに遅いですね…」

巫女「この先へ進むのであれば、気をつけてください」

古びた看板(ひどくかすれた文字で何かが書かれている)

ファイテン「まさか神宮の裏に、こんな鍾乳洞が隠れてたなんてねー」

百花文(神宮の奥に鍾乳洞…ですか。そんなはずはありませんから、恐らく__)

百花文(幽世と繋がったことで、こちらの世界のつくりにも、変化が起こっているのでしょう)

ファイテン「なるほどねー。同じようなことが各地で起こると大変だなぁ」

百花文(それは…確かにそうですね)

百花文(大変どころの話ではない気がしますが…)

百花文(ファイテンさん、そこはそろそろ幽世の入り口でしょうか?)

ファイテン「うん、そうだと思うよ。瘴気もすごく濃くなっている」

百花文(瘴気も濃く…ファイテンさんは何ともありませんか?)

ファイテン「え?」

百花文(今までの瘴気とは、別物のような気がするので…)

百花文(訓練を積んでいるファイテンさんでも、と思ってしまって…)

ファイテン「うーん。言われてみれば…」

百花文(はい…)

ファイテン「文ちゃんが言ってた…えーと、憎しみを生み出す、だっけ?」

ファイテン「その瘴気の影響か、私もなんだかイライラするんだよね…文ちゃんに対して」

百花文(ええっ…!?)

ファイテン「………」

ファイテン「ふっふっふっ!嘘だよーっ!」

ファイテン「文ちゃんにイライラするわけないよ!!」

百花文(ファイテンさん、ついてもいい嘘と悪い嘘がですね…!)

ファイテン「ごめんごめんっ!」

百花文(コホンッ…その先は幽世です。瘴気は一層濃くなるでしょう__校長先生にも報告したいですし、一旦、戻ってきていただけますか?)

ファイテン「あ、うんっ」

百花文(さっきの嘘について、直接話したいこともありますし、ね)

ファイテン「す、すぐに戻ります!」


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