第27章 伊勢:颶の静謐

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【逢魔時退魔学園】

文 ファイテン 校長 三善

三善先生「開いた門だが、すぐに閉じ、また開いたと報告された」

百花文「閉じた…?でもその門は__」

吉備校長「間違いなくファイテンのものじゃ。考えられることは一つ…」

三善先生「力を持ったあやかしが目的を持って守護者に成り代わった」

吉備校長「報告には状況も書かれておった。曰く」

吉備校長「辺りを揺るがす大風の後、まるで凍るかのように静まり返った」

吉備校長「後に静謐(せいひつ)をもたらす颶(おおかぜ)伝承から察するに龍神【一目連】じゃろうな」

三善先生「だが、今までに話に出てきた【古代の神の祠】とは違いとり憑いた門の力が小さい。自然、龍神も弱っている」

吉備校長「弱ってまで守護者に成り代わった、その原因はわからぬままじゃ」

吉備校長「悪の力を得た土御門との戦いを乗り越えたオヌシならば制せるじゃろう」

三善先生「調査も兼ねて、門を閉じて欲しい。それが学園からの試練だ」

ファイテン「門は閉じなければいけないですし、わかりました!」

吉備校長「文も、方位師として補佐してやってくれ」

百花文「はいっ!それは言われなくても、ですね!」

【伊勢国 颶の静謐(おおかぜのせいひつ)】

伊勢 風の静盆

ファイテン「静かっていうから、駿河のあの場所を思い出したけど。あやかしの気配はするし、あまり変わらない、のかな?」

百花文「風が全く吹いていないようですね。鳥も飛べないのか声がしません)

ファイテン 悪路 百花文

悪路王「泉の言う通り、守護者は依代となる門の規模に影響を受ける」

悪路王「規模の小さな門であれば、力が相応に制限されるのだ」

ファイテン「以前【雷獣】と戦ったときも、似たようなことを言われました」

悪路王「今のファイテンならば、道中も手こずることはなかろう。力を確かめつつ、先に進め」

ファイテン「はーい」

行商人「中だと許可がないと販売できないので、この場所で販売しているんです」

先遣隊「神聖な場所にもかくりよの門が現れるとは…」

巫女「あやかしが現れてからは、参拝する方も減って困っています」

旅人「久しぶりに来たが前より活気がなくなってる気がするな」

旅人「ここで安全祈願をしてから旅にでるんだ」

村人「境内に行こうと思ったんだが、道が封鎖されてるなんて聞いてないぞ」

行商人「せっかく販売許可を得たのに人が少ないから商売あがったりです」

旅人「境内に入れないので、少し探索しているんです」

庭師「昔からここで働いているが、ここまで人が少ないのは珍しいですね」

神主「かくりよの門へ行くには、橋のある方へ行ってみてください」

巫女「逢魔時退魔学園の生徒ですか、助かりました!かくりよの門へ行くには転送の陰陽玉に触れてください!」

巫女「陰陽玉に触れれば、かくりよの門の場所へ向かえますよ」

【伊勢国 颶の静謐 守護者前】

ファイテン 悪路 百花文

???「待ちくたびれたぞ。その身に常夜を宿せし者」

一目連「私は【一目連】さあ、その姿をみせよ」

ファイテン「……」

悪路王「憶するな。声とは風。風を操り、轟音に聞こえるのは脅しだ」

百花文(こちらには普通の声でとどいてます。私もついていますからね!)

ファイテン「ありがとう二人とも。私は大丈夫だよ。ただ__」

ファイテン「……」

ファイテン「常夜を宿せし者、とはどういうことですか?」

一目連「ほう?陸奥の鬼も憑いておるか。さてその理由は__」

悪路王「勝手に吾を詮索するな。あくまで目となるだけよ」

ファイテン(答えてくれない…か。私を見てすらいないみたい)

一目連「しかし中々面白い。いいだろう__」 一目連「さあ、私と斬り結べ!ただ一介の陰陽師として!」

ファイテン「言われなくても…私はただの陰陽師です!」

【逢魔時退魔学園】

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ファイテン「【颶の静謐】より戻りました。ただ、その…」

ファイテン「常夜を宿せし者、と言っていました。心当たりはありますか?」

吉備校長「ファイテンは式姫を憑依させ、常にその身に帯びることもできる」

吉備校長「例えそうでなくとも、悪が憑依しておる。【向こう側】を感じることもあろう」

吉備校長「加えれば【常夜の境】に出向くことも可能な陰陽師。その気配を感じ取った、だけとも思えぬ発言じゃな」

百花文「校長先生でも、わかりませんか…」

吉備校長「今はわからぬ。が、気になるな。必ず調べよう」

吉備校長「まずは__力が削がれているとはいえ、龍神の討伐、ご苦労じゃった。次なる門が開くまで、今しばらく休むと良い」

ファイテン「澄姫が帰ってきたら今回のことも話したいですしね!」

ファイテン「また一歩、近づいたよ。って」

吉備校長「一目連の言葉は、ワシの方でも更に調査を進めよう」

百花文「……」

吉備校長「…百花文よ。疑いは当然。その上で頼もう」

吉備校長「今回は初めての事態ゆえ、ワシだけでは手が足りぬ」

吉備校長「調査を手伝ってほしいのじゃ。オヌシにしか見えぬこともあろう」

百花文(…本当に、何か隠している訳ではなさそうですね…)

百花文「はい!わかりました!」

百花文「ファイテンさんのためなら喜んでお手伝いしますよ!」

吉備校長「うむ…助かる」

………

悪路王 校長

吉備校長「今はオヌシに問いたいこともあるが、問いから逃げたのはワシも同じ」

吉備校長「抑えて別のことを問おう。ファイテンは、血を浴びたか?」

悪路王「泉も奴の狙いに気づくか。その通りだ」

悪路王「討伐の最中、わずかではあるが一連目の【血】を浴びた」

悪路王「本来、吾のような存在でなければ流さぬはずのものをな」

吉備校長「あやかしは血を持たぬ。ただ瘴気が漏れ出るのみ」

吉備校長「血を浴びさせるために守護者に成り代わった、か」

悪路王「感じているだろう、泉よ。一連目討伐からだ__彼の地方にある古代の神の祠。ざわめきはじめたぞ」

吉備校長「血を浴びせ、足掛かりとし、信仰により現出する」

吉備校長「ワシも見たことのない龍神が今度は確認されそうじゃな…」

吉備校長「河川信仰からの龍神となるか、はたまた別の龍神となるか」

吉備校長「オヌシの真意はまだ問わぬ。じゃが__」

悪路王「ああ、見守ることにしよう。元より動けるほどの力はない」

吉備校長「…そう、か」

悪路王「……」

吉備校長「さて。これ以上、文に怒られぬよう、調査も進めねばならんな」

吉備校長「結果によっては悪よ__オヌシとワシが…」

悪路王「今は言うな。興が削がれる」

悪路王「結論より至る【その時】こそ、吾が最も見たい瞬間であるからな」


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