第36章 淡路:鳴門海峡

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【鳴門海峡 駐屯地】

鳴門海峡・駐屯地

澄姫 ファイテン 悪路王 校長

吉備校長「この地にて結界の準備をして、龍神の髭で海坊主を呼び出す」

悪路王「呼び出された海坊主は不完全。ファイテンにしかわからない」

土御門澄姫「ファイテンが戦力を削いだときに、結界を強めて封印する、よね?」

ファイテン「討伐は私しかできないから、封印は、みんなでですか?」

澄姫 伊邪那岐 悪路王 校長

吉備校長「結界の展開とその後の封印はワシらで行う。【土行の印】はワシが__」

悪路王「【火行の印】は吾だな。万事問題は無い」

伊邪那岐「【水行の印】は己がやろう。ふふ。懐かしさすら覚えるな」

土御門澄姫「私と柴乃姉が協力して【木行の印】を結び__」

隠神刑部 ファイテン 校長

隠神刑部「【金行の印】の担当は、吾輩と言うわけじゃ」

隠神刑部「問題は海坊主の討伐。…やれるか?」

ファイテン「任せてください!」

吉備校長「四国近海の荒れは幕府にも伝わっておる」

吉備校長「周辺の封鎖に人出を借りておる。不要かもしれぬと思ったが…」

吉備校長「陰陽師だけで解決ではなく、あくまで共同、とせぬとな」

吉備校長「この国が沈むかの瀬戸際じゃ。皆の力が必要になる」

ファイテン(私だけじゃなくて、皆の、かあ…少し、気分が高揚してきたかも)

ファイテン「皆さん…よろしくお願いします!」

隠神刑部 ファイテン 文 校長

ファイテン「文ちゃん。ここまでついて来てくれて、ありがとうね」

百花文「『良かったの?』じゃなくて、『ありがとう』なんですね」

百花文「ちょっと、嬉しいです…私も手伝いたかったですし」

百花文「海坊主を呼び出された後は結界の維持に努めますね」

吉備校長(結界の下準備は万全じゃ。逆打ちが終わっていたこともあっての)

吉備校長(本来は現出する前に、秘密裏に封じるつもりだったのじゃが…)

ファイテン「なんのなんの。私にしかできないなら__それをするだけです!わかりやすいって思いますよ」

吉備校長(……)

百花文「……」

吉備校長(無理矢理引きずり出すのじゃ。海坊主はまだ完全ではない)

吉備校長(それでも。集められた力の量は、他のあやかしとは全く異なるじゃろう)

吉備校長(厳しい戦いになるが、四国を、この国を沈めぬためにも__)

ファイテン「はいっ!やってやります!」

【鳴門海峡 かくりよの門】

鳴門海峡 かくりよの門

ファイテン「幽世から現れた妖怪。引きずり出された海坊主」

ファイテン「あなたの雰囲気が懐かしく感じるのは。ここまでの事態になったのは__それはきっと私だから、かな。うーん。ごめんなさい。は違うね」

ファイテン「今からあなたを封じます。私と、皆の力で」

ファイテン「あなたは…あなたも、きっと、現世に居てはいけない存在だから」

ファイテン「だから__覚悟しなさい」

【鳴門海峡 駐屯地】

隠神刑部 校長

隠神刑部「どうした。お前は混じらんのかの。あの若い乗りには、ついていけぬか?」

吉備校長「はっ…言っておれ。少々、考えたいことがあってな」

吉備校長「杯を傾けつつ考えるのならば、静かな方が良いだけのことじゃ」

………

隠神刑部「四国が、この国全てが沈む危機、これにて一段落と言えよう」

隠神刑部「吾輩はこれで愛比売に帰るぞ。後のことは任せるとしよう」

隠神刑部「残っていたら、張りの大器に斬りかかられるかもしれんからな」

吉備校長「やりすぎたせいじゃろう…ワシは土御門たちを止めぬぞ」

………

隠神刑部「かの地に門が開き、力が歪んだのはお前たちの仕業ではない」

隠神刑部「しかし、あの娘が逆打ちを行い、最後の切っ掛けを作ったのは事実」

吉備校長「…そう、じゃな」

隠神刑部「そして、逆打ちを行わせた理由。そこにも偽りはないと思っている」

隠神刑部「そろそろ一人で抱え込むな。何者かの掌の上で踊りたく無くば」

隠神刑部「贄となることを、替わりたいと言ったな」

吉備校長「逆打ちにて幽世との結びつきを強め、結界を張り、器ができた段階で__」

隠神刑部「自らが替わるつもりだったか。元々お前は式姫じゃろう?」

隠神刑部「幽世との結びつきもある。無茶ではあるが、不可能ではないな」

吉備校長「じゃが、結果として…」

吉備校長「幽世とファイテンの結びつきは強くなった。現世と、幽世も」

隠神刑部「基本に立ち返って考えてみろ。この状況を望む者をな」

………

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吉備校長「阿弖流為に、ワシの主。まさかとは思いたいが__」

吉備校長(どこまで見通していた。いや、保険を打っていた?)

校長の式 校長

校長の式「ご主人様。火急の報告があります」

吉備校長「…どうしたのじゃ?」

校長の式「まだ誰も気づいておりません。一部の式姫以外は」

吉備校長「明かすな、と言うことか。わかった。聞こう」

校長の式「四国にて現世と幽世が一部繋がった結果_」

校長の式「九州の一部が幽世と同一化しようとする気配があります」

校長の式「あやかしではなく、妖怪も伴った上で」

吉備校長「…なんじゃと…どういう、ことじゃ…!」

校長の式「幽世は時間の概念が薄い場所」

校長の式「その地で最も人の感情や思念が飛び交った頃の姿を留めます」

吉備校長「それはわかっておる!何が起ころうとしているのじゃ!」

校長の式「場所は筑前国と長門国の中間」

校長の式「壇ノ浦にて、古代の戦場が再現されようとしています」

校長の式「まだ時間はあります。落ち着いてください」

吉備校長「…ああ。すまん。オヌシに怒鳴ることではなかったな」

校長の式「お気になさらず。では、私はこれで」

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吉備校長(幽世と現世の境界が虚ろになれば、妖怪は現世に姿を現し__必要とされるものは陰陽師。ああ、ああ…!)

吉備校長「御主人様…私に託したことは、あの人を還らせるだけでは…」

吉備校長「私に託したことは…嘘ではない、ですよね…?」

吉備校長「……」

吉備校長「それとも__」

吉備校長「あの人を還らせるために、幽世と現世の帳を消すつもりなのですか!」


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