【逢魔時退魔学園】
吉備校長「…来たか」
ファイテン「呼び出し、いつも急ですね。今回は次の遠征先について、でしたっけ」
吉備校長「そうじゃな。それに加え、ワシの方でやりたいこともある」
ファイテン「校長先生が…?」
吉備校長「学校の裏手に来てくれ。文も、同行させた上でな」
【逢魔時退魔学園 裏手】
百花文「私にも話ですか?伝心で聞いているだけではなく」
吉備校長「ああ。ちと段取りをする必要があってな」
ファイテン「それは、次の遠征先に向かうためにですよね?」
吉備校長「正確に言えば少し違うか。悪よ__」
ファイテン「悪路王、さん?」
吉備校長「四国に遠征させた理由。それだけではない__」
吉備校長「まだ話しておらぬことや、しておかねばならぬこともある」
悪路王「吾と、泉がお前と共に歩む資格を失わぬようにな」
吉備校長「八重、こちらに」
三善先生「はい。お二人にはこちらを。ファイテンと百花には、これを」
ファイテン「お酒の入った徳利と、杯…ですか?」
吉備校長「般若湯じゃな。決して酒ではないぞ」
ファイテン「いや、その。私と文ちゃんはまだお酒を飲んだことが__」
三善先生「安心しろ。お酒は二人にだけ。お前たちのそれは水だ」
吉備校長「般若湯じゃと言うのに…」
三善先生「この流儀は私にも少しわかりますが…面倒ですね、お二人とも」
百花文「結局、話が見えないのですが、どういうことなんでしょう?」
三善先生「そうだな。まずは私のところに来てくれ。少し話したいことがある」
………
三善先生「この前の校長先生のことや、今回の四国遠征の結果__事が起こりすぎて、私にもまだ整理がついていない」
ファイテン「八重さん…」
三善先生「怒るべきか、悲しむべきか。私ができることは他にあるのか」
三善先生「そればかり考えて、気持ちの整理をつけられなくてな」
百花文「私も、同じです。やっと、校長先生が話をしてくれたと思ったのに」
三善先生「私はいつ、校長先生が、いや、泉さんが入れ替わったのか__」
三善先生「まったく気づけなかったよ。大門から一人生きて帰ってきたのかと」
三善先生「そう思っていたら、先の告白。誰に怒るべきだったのか」
ファイテン「……」
三善先生「今の校長先生や、過去の泉さん。二人に言いたいことは山ほどあるが」
三善先生「今回、あの人も迷っていることが。弱っていることがわかった」
三善先生「今まで以上に、な」
三善先生「私はあの人の補佐を続けるよ。ファイテンのためになると信じて」
三善先生「校長先生から頼まれた仕事がある。幕府との橋渡しを頼まれたのだ」
三善先生「百花、私を手伝ってくれ。私は学園から一時離れなければならない」
三善先生「今まで以上にファイテンを助け、私が居ない間を安心させてくれ」
百花文「…はいっ!」
三善先生「では、乾杯だ。杯を合わせるだけだがな」
(チィ…ン)
ファイテン「あ、あの。私も…!」
三善先生「ああ、そうだな」
(チィ…ン)
三善先生「私だけではなく、今後、話が終わったら校長先生に報告を頼んだぞ」
三善先生「誰と話をしたかをな」
ファイテン「わかりました!」