第33章 阿波:大渦の流路

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【逢魔時退魔学園】

ファイテン 文

ファイテン「文ちゃん、何かわかった…?」

百花文「いいえ、残念ですが…ファイテンさんは、ひと休みしてください」

百花文「ここしばらく、ゆっくりする時間もなかったでしょうし」

ファイテン「ふ、文ちゃんが優しい…」

百花文「普段は優しくないかのような言われようですが…」

ファイテン「あはは、そういうわけじゃないよ!?ねえ、文ちゃんもひと休みしたら…?」

百花文「お気持ちありがたいですが、私はもうちょっと作業を続けます。まだ調べていない書物もありますし」

ファイテン「そっかぁ…うーん。それにしても、四国が沈む、だなんて」

百花文「悪路王さんの言を疑うわけではありませんが__」

ファイテン「ねー、ずいぶん物騒なことを言うわりに、いつも通りに過ごしてるし」

百花文「お酒の量も減りませんね…」

悪路王 ファイテン 百花文2

悪路王「それとこれとは別の話だな」

ファイテン「わっ!?わぁっ!?いきなり現れないでください!」

百花文「少し前からそこにいましたけどね…」

悪路王「いるのをわかって言っていたのか」

百花文「はい、もちろんです」

ファイテン(うっ、文ちゃんが悪い顔をしている…)

悪路王「ふふ、まあ良い。その様子ではこれといって収穫はなしか」

ファイテン「あの、四国が沈むっていうのは…」

悪路王「そのままの意味だ。そして、それ以上の情報は吾も持たぬ」

ファイテン「…ええ!?もしかして、とは思ってたけど」

悪路王「それはそうだ、吾をなんだと思っている。ただ知り得たことを教えたまで」

悪路王「が、何もないよりはよかろう」

悪路王「お前たちが求めるもの、追うものの手がかりが、四国にないとも限らん」

悪路王「そこに可能性があったとして、その望みが潰えるやもしれぬのだ」

悪路王「となれば、仔細はともあれ伝えるべきだったと思わぬか」

ファイテン「そこについては素直に感謝してますけど、だったら、もうちょっと危機感をですね…」

悪路王「何を言うか。吾は確かに教鞭をとる身となったが、今この場において、お前たちの師となるつもりはない」

悪路王「いや、これまでも、これからもな」

ファイテン「そう言われると返す言葉が…よーし!!」

百花文「ファイテンさん…?」

ファイテン「わかりました!今すぐに発ちます!」

百花文「といっても、まだ情報が…」

ファイテン「これだけ調べてもわからないんだもん。あとは足で稼ぐしかないよ!」

ファイテン「現地に行って、直接確かめてくる!」

ファイテン「聞きこみするにしても、ここにいるより現地の人と話した方がいいだろうし」

百花文「そうですか…この状況では、決め手もないので止めることはしませんが、さしあたって、どこへ向かうんです?」

ファイテン「うーん…【鳴門海峡】かな!」

百花文「また、どうして…?」

ファイテン「ええとね、渦潮を見てみたいんだ!」

悪路王 ファイテン 百花文2

百花文「…あの、ファイテンさん?」

ファイテン「あっはは、そんな顔しないで、文ちゃん…」

悪路王「まったく、いちいち笑わせてくれる」

ファイテン「悪路王さんまでそうやって…」

悪路王「吾のことなど気にするな。まあ、悪い選択でもなかろう」

悪路王「ひとの力及ばぬところに災禍あり。鳴門の海もまたその一つと言えなくもない」

百花文「それでは、私は引き続き調査を続けます。何かわかりしだい、すぐにお伝えしますね」

ファイテン「うんっ、ありがとう!それじゃあ、でかけるとしますか!」

【阿波国 大渦の流路(おおうずのりゅうろ)】

大渦の流路

ファイテン「うーん、やっぱり全然空気が違うねー。風の重さも違う気がする」

ファイテン「あれ…?あそこに見えるのはなんだろう?いくつか並んでるけど…」

百花文(大渦の流路で珍しいものというと、塩田でしょうか)

ファイテン「えんでん…?」

百花文(海水から塩を作るためのものですね)

ファイテン「あー、あの山盛りになってるのってお塩なんだ?」

ファイテン「これだけお塩が盛ってあったら、あやかしも逃げていきそうだね!」

百花文(お塩で逃げていくのは幽霊では…)

ファイテン「そ、そうだっけ…」

百花文(まあ、それはいいとして)

百花文(今回は情報が足りていないので、あやかしについて、あまり助言ができません)

百花文(役に立てなくてすみませんが、無理はしないでくださいね)

ファイテン「はーい!」

村人「今日は天気もいいし、ちょっくらひと休みでもするかな」

村人「陰陽師さん、塩田を見るのは初めてかい?」

行商人「あやかしが出るようになってから、気つけ薬などがよく売れるようになったね。まだ在庫はあるから欲しければ売りますよ」

村人「ここの人たちはいつも泥まみれになるから、洗濯するのが大変なのよね。あなたに言っても仕方がないんだけど」

大渦の流路2

村人「おぉ、塩田に入ってくるのは構わないが、荒らさないどいてくれよ」

町娘「時化がひどい時でも流されないような工夫をしているんだって!」

村人「ほら、あんたも釣りするんだったら餌を分けてあげるよ」

町娘「この飛び島を作った理由?んー、聞いたけど忘れちゃったな…」

村人「ねぇ!何だかいつもより渦潮が大きくなっていない?」

村人「そう?昨日、雨が降ったからそのせいじゃない?」

陰陽師「この気配はやはり…、私に何かご用でしょうか?」

ファイテン 文
ファイテン「うわぁ…大きい…どうやったらこんなに大きな渦が…」

百花文(ファイテンさん、渦の見える場所にいるんですか?)

ファイテン「うん、そうだよー。こんなに大きいとは思わなかった」

百花文(その場所から【黒い渦】は見えますか?)

ファイテン「えっ、黒い渦…?ううん、ないけど…もしかして、何かわかったの!?」

百花文(まだ確証はないんですが、気になることがあります)

百花文(地元の住民や陰陽師の方にいろいろと話を聞いていたようですが、ひと月くらい前から少しずつ数が多くなって、渦もしだいに大きくなってきている…)

百花文(と、いうことでしたよね?)

ファイテン「うん、あやかしの数が増えているって話もあったけど、これは人によって、言ってることがまちまちだったかな…」

百花文(わかりました。ファイテンさん、一旦話を整理しましょう)

百花文(とりあえず、戻ってきてください)

ファイテン「はーい、すぐに戻るね!」


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