【逢魔時退魔学園】
ファイテン「あの・・・校長先生」
吉備校長「聞きたいことを隠す必要はない。土御門のことじゃろう?」
ファイテン「は、はい!」
吉備校長「偶然か、それとも必然か。土御門の足跡は掴めたぞ」
ファイテン「偶然?必然・・・?」
吉備校長「木曽妖怪印章の範囲内じゃな。どうやら土御門の力に応じて開いた門を閉じているらしい」
ファイテン「そ、それなら」
吉備校長「ああ、各地のかくりよの門を追えば、自然と追いつくこともできよう」
吉備校長「確認された場所は【木曽川御囲堤】尾張国にある」
ファイテン「そこには、ひょっとして私の・・・」
吉備校長「そうじゃな。ちょうどオヌシの門も開いておる。陸奥国ではオヌシを追っていた土御門を今は追う形となったな」
ファイテン「それが、今の私と澄姫の差なら、追いつけるように進むだけです!」
ファイテン「木曽川御囲堤のかくりよの門を閉じて、澄姫を追います」
吉備校長「ふむ・・・門を無視して先に進むことはない、と?」
ファイテン「澄姫に追いついたときに【門を無視してきた】なんて、そんな後ろめたいことはしたくないんです」
ファイテン「澄姫は正義感で門を閉じていた。きっと行方をくらました今も同じです。澄姫と向き合うためにも、力を磨くためにも」
ファイテン「私も、門を閉じつつ追いかけます!」
吉備校長「そうか・・・そうじゃな。その通りじゃ」
吉備校長「木曽川御囲堤にあるかくりよの門は少し事情があってな・・・」
吉備校長「まずは美濃国との境である【尾張街道】から向かってくれ。土地のことは、百花に伝えておこう。頼んだぞ」
ファイテン「はいっ!」
【国境 尾張街道】
ファイテン「なんだか、街の雰囲気が楽市楽座とは違うね」
百花文(実はこの先に流れる木曽川の堤防を増築する話があるんです)
ファイテン「そうなの?でも、それっていいことじゃないかな・・・?」
ファイテン「あっ・・・!もしかして、あやかしが邪魔をしているとか!?」
百花文(・・・それなら、話が単純なんですが、どうやら違うみたいです)
百花文(川には両岸があります。そして、木曽川は国境になっています)
百花文(木曽川を隔てて尾張と美濃は接しているんですが・・・)
ファイテン「うんうん・・・」
百花文(増築されるのは、尾張国側だけなんです・・・)
ファイテン「えっ!?」
百花文(尾張国側の堤防を高くする。それが次の工事です)
ファイテン「それじゃ、美濃国の人は・・・」
百花文(はい・・・この工事に関して、対立があるそうです)
百花文(かくりよの門が開くたびに止まる工事。対立も終わらない、と)
ファイテン「それなら・・・なるべく早く閉じて、すぐに工事をして美濃国側にも、着手できるようにしないとね!」
百花文(・・・!はい!そうですね!その為にもがんば ゴフッ!)
ファイテン「そこは綺麗にしめて欲しかったな・・・」
先遣隊「かくりよの門が開いたようだが、特に被害は聞いていない。川の水位が上がったくらいらしいが・・・」
村娘「近々、川の堤を作るらしいんだけど、なかなか進まないみたい」
町人「次の工事で尾張側の堤が高くなるんだとよ。・・・大雨でも降って洪水が起きたらどうすんだ?」
幕府の役人「美濃側の者の反応は思った通りだな。しかし、美濃と尾張同時に堤を築けるほど、今は人も資材も足りん・・・」
近隣の町娘「そこのお茶屋さんとか大丈夫かしら?多分、最初に水浸しになっちゃうと思うけど・・・」
茶屋の主人「いらっしゃい。この木曽川を眺めながら茶でも如何です?」
近隣の村人「川を渡る橋なら逆方向だぞ。この辺りからならもう、そこの水先人の舟に乗せて貰った方がいいな」
水先人「向こう側に行くなら舟に乗ってくれ」
幕府の役人「かくりよの門とやらが無いではないか。・・・情報が古いのか、狐に騙されたか?」
川釣師「堤が出来ても釣りは出来るのかね?川が狭まったりして魚がいなくならなきゃいいが」
川釣師「堤があろうが無かろうが、釣りは止めらんねぇ。美濃と尾張のヤツには悪いが仕事なんでな」
幕府の役人「どうやら川の上流にかくりよの門があるようですな。尾張側からなら行けるでしょう」
陰陽師「川の上流の方にかくりよの門、で、川の水位が上がってー・・・と来たらやっぱり、水に関係するあやかしなのかしら?」
旅人「この辺りで雨が降ると川の水位が上がり、この砂利は川に沈むぞ」
【逢魔時退魔学園】
吉備校長「川の渡しまでは到着できたようじゃな。続けて尾張側から進むと良い」
百花文「あの、校長先生・・・方位師として補佐をしていて感じました。何故、あの川はあんなに想いが・・・」
吉備校長「川は、水は生きるために欠かせぬもの。だが時として荒れ狂い、全てを押し潰す」
吉備校長「それ故、川を神としてたたえ、その長き姿を龍と成す。各地の龍神の発祥となったとされる川への信仰が、これじゃ」
ファイテン「それは、聞いたことがあります」
吉備校長「木曽妖怪印章の地方には、木曽三川(きそさんせん)。そう呼ばれる大きな川がある。時に交わり、分れ、近づき、離れ。押し潰したものの数も多い」
ファイテン「それじゃ、木曽川御囲堤の守護者はひょっとして、木曽龍神・・・」
吉備校長「ファイテンよ。案ずるな。龍神ではない」
吉備校長「守護者の名前は【ヤロカ水(やろかみず)】」
百花文「その名前、ひょっとして、資料にある大水害の・・・」
吉備校長「そうじゃ。木曽三川の大水害を元としたあやかしよ」
吉備校長「しっかりと準備をし、それから向かうと良い」
ファイテン「はい。わかりました!」