第24章 尾張街道

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0

【逢魔時退魔学園】

008.png

ファイテン「あの・・・校長先生」

吉備校長「聞きたいことを隠す必要はない。土御門のことじゃろう?」

ファイテン「は、はい!」

吉備校長「偶然か、それとも必然か。土御門の足跡は掴めたぞ」

ファイテン「偶然?必然・・・?」

吉備校長「木曽妖怪印章の範囲内じゃな。どうやら土御門の力に応じて開いた門を閉じているらしい」

ファイテン「そ、それなら」

吉備校長「ああ、各地のかくりよの門を追えば、自然と追いつくこともできよう」

吉備校長「確認された場所は【木曽川御囲堤】尾張国にある」

ファイテン「そこには、ひょっとして私の・・・」

吉備校長「そうじゃな。ちょうどオヌシの門も開いておる。陸奥国ではオヌシを追っていた土御門を今は追う形となったな」

ファイテン「それが、今の私と澄姫の差なら、追いつけるように進むだけです!」

ファイテン「木曽川御囲堤のかくりよの門を閉じて、澄姫を追います」

吉備校長「ふむ・・・門を無視して先に進むことはない、と?」

ファイテン「澄姫に追いついたときに【門を無視してきた】なんて、そんな後ろめたいことはしたくないんです」

ファイテン「澄姫は正義感で門を閉じていた。きっと行方をくらました今も同じです。澄姫と向き合うためにも、力を磨くためにも」

ファイテン「私も、門を閉じつつ追いかけます!」

吉備校長「そうか・・・そうじゃな。その通りじゃ」

吉備校長「木曽川御囲堤にあるかくりよの門は少し事情があってな・・・」

吉備校長「まずは美濃国との境である【尾張街道】から向かってくれ。土地のことは、百花に伝えておこう。頼んだぞ」

ファイテン「はいっ!」

【国境 尾張街道】

尾張街道

ファイテン「なんだか、街の雰囲気が楽市楽座とは違うね」

百花文(実はこの先に流れる木曽川の堤防を増築する話があるんです)

ファイテン「そうなの?でも、それっていいことじゃないかな・・・?」

ファイテン「あっ・・・!もしかして、あやかしが邪魔をしているとか!?」

百花文(・・・それなら、話が単純なんですが、どうやら違うみたいです)

百花文(川には両岸があります。そして、木曽川は国境になっています)

百花文(木曽川を隔てて尾張と美濃は接しているんですが・・・)

ファイテン「うんうん・・・」

百花文(増築されるのは、尾張国側だけなんです・・・)

ファイテン「えっ!?」

百花文(尾張国側の堤防を高くする。それが次の工事です)

ファイテン「それじゃ、美濃国の人は・・・」

百花文(はい・・・この工事に関して、対立があるそうです)

百花文(かくりよの門が開くたびに止まる工事。対立も終わらない、と)

ファイテン「それなら・・・なるべく早く閉じて、すぐに工事をして美濃国側にも、着手できるようにしないとね!」

百花文(・・・!はい!そうですね!その為にもがんば ゴフッ!)

ファイテン「そこは綺麗にしめて欲しかったな・・・」

先遣隊「かくりよの門が開いたようだが、特に被害は聞いていない。川の水位が上がったくらいらしいが・・・」

村娘「近々、川の堤を作るらしいんだけど、なかなか進まないみたい」

町人「次の工事で尾張側の堤が高くなるんだとよ。・・・大雨でも降って洪水が起きたらどうすんだ?」

幕府の役人「美濃側の者の反応は思った通りだな。しかし、美濃と尾張同時に堤を築けるほど、今は人も資材も足りん・・・」

近隣の町娘「そこのお茶屋さんとか大丈夫かしら?多分、最初に水浸しになっちゃうと思うけど・・・」

茶屋の主人「いらっしゃい。この木曽川を眺めながら茶でも如何です?」

近隣の村人「川を渡る橋なら逆方向だぞ。この辺りからならもう、そこの水先人の舟に乗せて貰った方がいいな」

水先人「向こう側に行くなら舟に乗ってくれ」

幕府の役人「かくりよの門とやらが無いではないか。・・・情報が古いのか、狐に騙されたか?」

川釣師「堤が出来ても釣りは出来るのかね?川が狭まったりして魚がいなくならなきゃいいが」

川釣師「堤があろうが無かろうが、釣りは止めらんねぇ。美濃と尾張のヤツには悪いが仕事なんでな」

幕府の役人「どうやら川の上流にかくりよの門があるようですな。尾張側からなら行けるでしょう」

陰陽師「川の上流の方にかくりよの門、で、川の水位が上がってー・・・と来たらやっぱり、水に関係するあやかしなのかしら?」

旅人「この辺りで雨が降ると川の水位が上がり、この砂利は川に沈むぞ」

【逢魔時退魔学園】

014.png

吉備校長「川の渡しまでは到着できたようじゃな。続けて尾張側から進むと良い」

百花文「あの、校長先生・・・方位師として補佐をしていて感じました。何故、あの川はあんなに想いが・・・」

吉備校長「川は、水は生きるために欠かせぬもの。だが時として荒れ狂い、全てを押し潰す」

吉備校長「それ故、川を神としてたたえ、その長き姿を龍と成す。各地の龍神の発祥となったとされる川への信仰が、これじゃ」

ファイテン「それは、聞いたことがあります」

吉備校長「木曽妖怪印章の地方には、木曽三川(きそさんせん)。そう呼ばれる大きな川がある。時に交わり、分れ、近づき、離れ。押し潰したものの数も多い」

ファイテン「それじゃ、木曽川御囲堤の守護者はひょっとして、木曽龍神・・・」

吉備校長「ファイテンよ。案ずるな。龍神ではない」

吉備校長「守護者の名前は【ヤロカ水(やろかみず)】」

百花文「その名前、ひょっとして、資料にある大水害の・・・」

吉備校長「そうじゃ。木曽三川の大水害を元としたあやかしよ」

吉備校長「しっかりと準備をし、それから向かうと良い」

ファイテン「はい。わかりました!」


« 前のページ / 次のページ»