【逢魔時退魔学園】
三善先生「三島漁村に開いたかくりよの門は、山間部ではなく、海のほうから確認されている。今度は逆に、浜辺を目指してもらうことになるな」
ファイテン「浜辺かー・・・海も久しぶりですね」
三善先生「出現するあやかしだが、水の中から強い気配がするらしい。釣りをするときには、少し気を付けるといいだろう」
百花文「先生。その浜辺では【蟹】は確認されていますか?」
三善先生「少し待っていろ」
・・・・・・
三善先生「確認されていないな。あやかしの種類は、山間部とほぼ変わらないらしい」
百花文(やっぱり、そうですか・・・)
三善先生「新しく開いた門の為、守護者の確認もまだ取れていない。わからないことだらけですまないが、せめて気を付けて行ってきてくれ」
ファイテン「はいっ!」
【越後国 三島漁村】
ファイテン「いよいよかくりよの門、だね。なんだか本当に久しぶりな気がするよ」
百花文(そうですね・・・ええ。本当に久しぶりですあ)
ファイテン「さっきはどうしたの?文ちゃん。先生と話したとき、難しい顔してたけど」
百花文(ええと、少し考えていることがあるんです。まだ、気のせいかも、ですが・・・」
ファイテン「そっか。じゃあ、結論が出たら教えてね!」
百花文(はい。そうしますね。・・・ありがとうございます)
先遣隊「川を下れば、すぐに浜辺に出られるぞ」
村人「沖の方にある島から、気味の悪い笑い声が聞こえることがあるんだ・・・」
漁師「あやかしが吹く息で、魚がダメになっちまった・・・」
漁師「佐渡には金山があるらしいな。ま、俺達漁師は山とは無縁だから関係ないがね」
村娘「海の方には首のお化けがまだいるのね。早くお父さんが獲ってきたお魚が見たいなぁ」
旅人「魚の干物を買い付けに来たのだが、今はそれどころではないようだな」
【越後国 三島漁村 守護者前】
百花文(かくりよの門に着いたようですね)
ファイテン「守護者の情報は・・・ないんだっけか」
百花文(はい・・・初めての門、とのことでしたので)
ファイテン「そっか。それなら、どんなあやかしでも対応できるようにしておかないとね」
百花文(あの、ファイテンさん)
ファイテン「ん?どったの?文ちゃん」
百花文(私の予想が正しければ・・・ですが)
百花文(今までこの土地のあやかしは、伝承を元としたものではありませんでした)
百花文(守護者も、怪談などの曖昧なものが姿を取っていることが予想されます)
百花文(ただの【恐ろしいもの】として伝わるもの。それが姿を取ったとなると、強大な攻撃力か、執拗なまでの状態変化。このどちらかに特化していると思われます)
百花文(十分に注意してくださいね)
ファイテン「うん。わかった。そのどっちか、でいいのかな?」
百花文(はい・・・どちらも、では無いはずです。これも予測ですが)
ファイテン「それでも十分だよ。少しでも予測があると気構えもできるしね」
ファイテン「それじゃ・・・いざっ!」
【逢魔時退魔学園】
ファイテン「越後三島漁村のかくりよの門守護者、朱の盆を討伐してきました」
吉備校長「おお。戻ったか・・・新たな門など、ここ数年では初めてじゃ。色々苦労掛けたと思うが、無事で安心したぞ」
悪路王(泉よ。少し話がある)
吉備校長(悪か・・・)
悪路王(どうやら、あの小娘も薄々感ずいたようだがな)
吉備校長(百花もか。いや、オヌシは予測がついたが、あの子も聡いからの・・・)
悪路王「ファイテン。先に自宅に戻っていろ。吾は泉と話がある」
ファイテン「あんまり、遅くならないようにしてくださいね」
悪路王「・・・心がけよう」
ファイテン「それじゃ、先に戻ってますねー」
吉備校長「行ったか」
悪路王「あれはどういうことだ、泉」
吉備校長「先遣隊から報告は聞いた。どうやら出現したあやかしはほぼ全てが【怪談】を元にした、土地に根付かぬものだったらしいの」
吉備校長「幾つかオヌシの鬼気に誘われ、出でたものもあるようだったがの」
悪路王「土地に根付かぬものが多いのはまだいい。かの地には【アレ】がいるからな」
悪路王「他の伝承や信仰が割り込む隙間が無くとも仕方はない。だが、先の大首の大量発生。それに今回の【朱の盆】どちらも人の匂いと意思を感じた」
吉備校長「わかっておるよ・・・幕府には、ワシから真意を問うておこう」
吉備校長「あまり期待は出来んがな。純粋に幕府側は何も知らぬ可能性がある」
悪路王「どうやら、吾がお前らに取り憑いたときとはまた情勢が色々と違うようだな」
吉備校長「時も流れた、それは仕様のないことじゃ。あの子の成長を見ていればわかるじゃろう?」
悪路王「・・・・・・」
吉備校長「何か動きがあれば、また伝えよう。今は、暫くワシに任せておいてくれ」
悪路王「・・・ああ、そうしよう。吾を失望させるなよ?泉」
吉備校長「言われるまでもないわ、悪よ。それとワシからも一つある」
悪路王「何用だ?」
吉備校長「何に義理立てしているかは問わんが、もう少し前に出てきても構わんのじゃぞ?」
悪路王「覚えておこう。だが、どう動くかは吾の自由だ」
吉備校長「そうじゃ。自由に、な・・・」