【逢魔時退魔学園 裏手】
百花文(ここは?)
ファイテン「文ちゃんも知らなかったんだ。ここ、学園の裏手なんだよ」
百花文(ずっと学園で学んでいたのに、知りませんでしたね・・・)
ファイテン「私以外に人を見たことがないから、結構みんな知らないのかもね」
百花文(それに、その祠は・・・)
ファイテン「ここね・・・龍がいるんだ」
百花文(りゅ、龍ですか!?龍が学園にいるなんて大変じゃないですか!)
ファイテン「それがね、この龍は完全に封印されてて、力を奪われているみたいなんだよね。だから・・・悪いと思いながら、実技試験の前とかに、腕試しをしていたんだ」
百花文(えっと・・・つまり、危険はない、と?)
ファイテン「何をしても全然手ごたえがないんだよね。だから、いつも私の方が疲れちゃってた」
百花文(はあ・・・それならば、今は式姫の確認や、討伐の練習に使えそうですが・・・)
百花文(・・・・・・確かに、幾重にも厳重に封印されていますね。封印を解く方が、逆に大変そうです)
ファイテン「そうなんだよね。いったい誰が、いつ、どんな理由でこの子を封印したんだろう・・・うんっ、とにかく。今日もお手合わせ願いますか!」
百花文(相手にされないと思いますけどね)
ファイテン「それはそれで!」
【逢魔時退魔学園】
三善先生「この試練から、いよいよ本格的な遠征に入る。今回の遠征が終われば、陰陽師として一人前といって差し支えないだろう」
ファイテン「とうとうここまで来れたんですね・・・ふふふ」
三善先生「目的地は【下総国】にある【佐倉村】。目標は【案山子神】。あやかしの種類も増えている。相性に気を付けるのだぞ」
ファイテン「相性、ですか」
三善先生「相性とはそのまま、武器や術の相性といったところだ。打属性が効きやすい相手もいれば、逆にほぼ防いでしまう相手もいる」
三善先生「例えば案山子神は、火に弱くて、風に強いあやかしだ。また、遠征先では現地の人や、先遣隊から【試練】を受けることができる。報酬もきちんと出してもらえるので、受けておくといいだろう」
ファイテン「はーい、わかりました!」
【佐倉村】
ファイテン「うーん!見渡す限りの畑と田んぼだね!」
百花文(本当にその通りですね。私も、式を通して確認できていますよ)
村人「お勤めご苦労様です」
村娘「逢魔時退魔学園の生徒さんですか?ぜひ助けてください!」
村人「妖怪が多すぎんだ。少し減らしてくれよ・・・」
村人「突然、村のお奥に【かくりよの門】がひらいて、妖怪があふれてきたんだ!」
【佐倉村 案山子神祠前】
ファイテン「あれっ。ここの門の雰囲気も、本郷村と同じような・・・」
百花文(その通りです。さすがは陰陽師ですね)
百花文(守護者は本郷村と同じく【案山子神】のようです)
ファイテン「でも、瘴気はこっちの方が少し強いね・・・」
百花文(瘴気の強さは、あやかしの強さです。気を付けてくださいね)
【逢魔時退魔学園】
校長先生「おお、戻ってきたようじゃの。ご苦労だった、報告はワシが聞こう」
ファイテン「あれ、三善先生は・・・?」
校長先生「報告がワシでは不足かの?」
ファイテン「いや、不足も何も生徒にそれは・・・」
三善先生「ファイテンか。どうした?こんなところで」
ファイテン「三善先生!ちょうどよかった。遠征の報告を聞いてください」
校長先生「ふーむ・・・ワシに報告ではダメだったか」
三善先生「私も問題はないと思いますが・・・」
三善先生「ファイテン、校長先生への報告では不満なのか?」
ファイテン「へ・・・?こ、校長先生!?ちょっと派手な格好をした生徒かと・・・」
校長先生「こうして顔を合わせるのは初めてじゃからな、仕方ない仕方ない」
三善先生「吉備 泉(きびのいずみ)先生。この逢魔時退魔学園の校長先生だ」
三善先生「陰陽師の始祖と呼ばれる吉備に連なる方で、学園の創始者でもある」
三善先生「がい年を数えているはずの年齢を含めて謎が多いと・・・」
吉備校長「そこまでじゃ、三善先生。年齢などはどうでもよい、些末なことよ。見た目で油断も誘えるからな」
ファイテン「がい年って五十ってことですよね・・・それなのに、これは・・・」
三善先生(まあ、言いたいことはわからないでもないが、な)
吉備校長「報告と言ったがな、ファイテンの討伐は式を通して見ておった。中々の手並みじゃった。これならば週課を解放しても問題はあるまい」
ファイテン「週課、ですか?また宿題とか・・・」
吉備校長「宿題とは違い、やる義務はない。試練を受け、気長にこつこつやるも、一気にやるも自由じゃ。また一人前の陰陽師として【退魔学園採掘場】の使用を許可するぞ」
ファイテン「助かります」
吉備校長「最後に【狛犬の型紙】を支給しておこう。忘れずに召喚するんじゃぞ?」
ファイテン「いいんですか!?ありがとうございます」
吉備校長「ではな、また会うこともあろう」
ファイテン「はい。ありがとうございました」
三善先生「特別扱い、しないはずだったのでは?」
吉備校長「なに、式で様子を見るくらいはな・・・だが、失敗した」
吉備校長「思い出してしまったよ、あの日のことを・・・昨日のことのように、な・・・」