【EQ】第31話「ベファーレン(Befallen)」

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#1「初めてのダンジョン」
#2「謎のゾンビーガイ」
#3「アンデットの恐怖」
#4「トラップ!ポポ助絶体絶命」
#5「救世主ステルク」


初めてのダンジョン

 プラチナ金貨40枚をはたいてようやく手に入れた魔法武器。攻撃力はファインスチール物と変わらないんだけど、これでないと倒せない奴とかいるから思い切って買い替えたんだ。

 すると今度は、それ系のモンスターに挑みたくなるのが、健全な冒険者と言うものだよね(笑)。いつまでもオーク一族ばかり相手にしているほどおいらも暇じゃないんで、さっそく定番のダンジョン探索に乗りだしたんだ。

 おいらのレベルに合っていて、ウエストコモンに近いダンジョンはないかなって探してみたら・・・・・ありました。その名もベファーレン(Befallen)。ウエストコモンの中心にある宿屋から少し南下すると砂漠があって、その先の崖の岩肌にベファーレンへと通じる洞窟がポッカリと開いているんだ。

BEFALLEN_B1F ゾーンの壁を越えるとトレジャーハンターで大にぎわいかと思い気や、中は人影もまばらでひっそりとしていた。その静けさがおいらにはかえって不気味に感じられたよ。地下1階は大ネズミ(Large rat)やらスケルトンなどの雑魚ばかりで、おいらが近づいてもぜんぜん無反応なんだ。それからおいらは、フロアーにある4つドアを手前から順に開けていったんだ。

 しかし、どれを開けても中にいるのは雑魚なモンスターばかり、しかも中には鍵が掛かっていて開かない扉もあった。おいらは慎重に先を進んだよ。少し行くと部屋の一角に井戸のある場所があって、そこにだけおいらでも青に見える奴が現れた。名前はスケルトンロード(Skeleton lrodd)、おいら手始めにそいつと戦ってみることにしたんだ。

 すると青く見える割りにはけっこう骨のあるやつで (骨だよ(笑))、おいらのHPがジリジリと削られ始めた。ま、奴の方が減り方が早いから大丈夫だろ、そう思っていたがトレジャーハンターの一人が横から割り込んで来て、あっさりとかっさらって行ってしまった。

 むむ、こいつKS(獲物泥棒)か?・・・・・ま、いいや。

 おいらはさらにドアを開けた。一つの方にはノームのNPCがいてお伴の骸骨がいるところを見るとネクロマンサーなんだろうな。強さは緑なので近づいても襲っては来なかった。で、もう一つのドアにはベットルームがあってそっちは誰もいなかった。 が、おいらはそこに居座ることにしたんだ。

 何故って?、実は異世界に伝わるダンジョンの手引書にここと同じ画像があるからなんだ。で、ここにはシャドーナイトのNPCがポップアップするはずなんだ。そしてそいつを倒して手に入る物が、例の鍵のかかったドアの鍵ってわけさ。それを手に入れないことには更に先には進めないんだよ。

 おいらが待っているとその部屋には入れ替わり立ち替わりいろんな、ハンターが入ってきたよ。そしてその中に何度も何度も顔を出すやつがいた。入ってきてはベッドルームを覗いて、何もいないと出ていくんだ。そして10秒もしないうちにまた帰ってくる。そう、さっきおいらから獲物を奪っていった奴さ。

 レベルやクラスは隠されていたからわからなかったけれど、強さを調べたら黒だったから多分おいらと同じなんだろうな。すごく無口な奴でスケルトンロード(Skeleton lrodd)の湧く場所とここを行ったり来たりしている。おいらに鍵を取られるんじゃないかって気が気じゃないんだろうね。 なんかいやーな雰囲気なんだけどおいら放っておいたんだ。


謎のゾンビーガイ

 どのくらい待ったのかな。奴さんも走り回るのに疲れたのか突然「AFK」って言っておいらの横に座り始めた。が、ものの30秒もしないうちに行ってしまったからたぶん口で言っていただけなんだろうね。なんだか哀れに思えてくるほど見えっ張りな兄さんだよ。

SHADOW_KNIGHT007 だがお目当てのシャドーナイトのNPCは兄さんの出ていった直後に現れた。得てしてそういうものなんだよ人生は(笑)。で、NPCの強さは緑だったのだけれどはじめて戦う敵だし、おいら慎重に進めたんだ。が、それが裏目に出てしまった。シャドーナイトの奴ちょっと殴られるとすぐに逃げ出しやがったんだ。

 この根性無し!待てぇ〜〜!

 おいら必死で追いかけるんだけど奴めなかなかすばしっこくってさ。なんと鍵のかかった部屋に逃げ込みやがったんだ。おいらもその後をついて行きたかったけど、思いとどまったんだ。だってその先はまだ知らない世界だし、変なのが出てきたら逃げられなくなっちゃうからね。

 で、そのことを例のトレジャーハンターの兄さんも気づいたみたいでさ。ベッドのある部屋に戻ってくるといきなり話し掛けてきたんだ。いや、話しかけてきたんじゃなくっていきなりINVITEボタンがFOLLOWに変わったんだ。

 ポポ助:ねえ、君のレベルとクラスを教えてよ。おいらは兄さんに尋ねてみた。グループを組むならそのくらい知っていないと困るだろ。

 が、その兄さんは INVITEボタンを連打するだけで何も言わなかったよ。変なやつだと思ったけれど、あまりしつこいんでまあいいかって感じでグループを組むことにしたんだ。名前はリジアット(Rijiat)武器は両手持ちのソード、そしてHealの使えるクラス。それ以外は不明。

 だが リジアットはまったく話さない訳でも無かった。話す言葉は「follow me」「stop」「stay」「cool」「Thx」の5つ。ベラベラとおしゃべり好きな火の玉ボーイも困るけど、全然喋らないゾンビー・ガイも不気味。だけど、戦闘は手慣れていたよ。その点は 火の玉ボーイよりはましかな(笑)

 二人で15分ほど待っていると シャドーナイトのNPCは再び現れた。で、前と同じく逃げ出したんだけど今度は二人掛かりだから奴も逃げ切れなかったよ。 リジアットはすかさず獲物を漁りだし、そしておいらに鍵を差し出したんだ。

 ポポ助:ありがとう(彼の行動がおいらには意外だった)もしかしたら口下手なだけのいい奴なのかも?ふと、そんな風にも思えた。

 (Wanna group? )おいら宛にどこからかtellが入ってきた。

 ポポ助:仲間になりたいってtellが入ったけどどうする? リジアット。おいらは相棒に聞いた。

 が、我がリーダーは無言だった。いいとも悪いとも返事がない。メンバーは二人で充分、そう思っているのは確かだった。そしてひと言「follow me」彼はそう言うと、おもむろに走りだし鍵のかかった例の部屋へと入っていったんだ。

 なんだ、自分の鍵は持っていたのか。


アンデットの恐怖

BEFALLEN_B2F015 崩れた壁のあるその部屋の穴からは、地下へと続くループ状の細い道が続いていた。降りてゆくと地下二階には人気の無いフロアーが広がっている。廊下を進み、突き当たりを左に折れるとヒューマンのネクロがいて、そこから右に右にと進むとお目当てのダークエルフのネクロマンサーが待っている。

 ダンジョンの手引書によると、地下二階にいる二人のダークエルフ・ネクロを倒すと地下三階への鍵が手に入るという。こいつはその一人目だった。リジアットが先に切りかかる、おいらの方は少しあわててしまって、NPCに手を振ってしまう大バカを演じてしまった(#^_^#)情けない

 ここのネクロは地下一階のシャドーナイトよりも強く、リジアットはペット骸骨にかなり削られたようだ。が、そこはパーティプレイの強みで彼が休んでいる間はおいらが盾になる。おいらも自分で回復させながら戦う。おいらのようにHPが減ったままモンスターに切りかかるようなヘマを彼は演じなかった。

 実に割り切った物の考え方をしているね。それは生きるうえで必要な考え方ではあるけれど、同時に多人数のパーティプレイになじめない彼の弱点でもあった。彼はやがて壁にぶつかる、おいらから見てもそれは明らかだった。が、今は彼の方が1枚も2枚もうわてだったよ。それはソロ活動だけで生きてきた孤独なハンターの、サバイバルテクニックだったのかも知れない。

 それに比べおいらの方は精神的に動揺していた。彼の後をついてきただけなので、戻る道さえわからない。未知の領域であることが、おいらをいっそう臆病にさせていた。

 ここで死んだら鍵無しでは死体回収が出来ない、そう思うと足がすくんだよ。心臓はドクドクと音を立てて鳴り響いてさ、思うように歌が唄えない。そして次のホールのドアを開けた瞬間、その緊張は極限に達してしまった。

 おびたたしい数の骸骨、骸骨、骸骨。ムーミー、そしてネクロマンサー。

BEFALLEN_B2F014 密閉された部屋の中にモンスターの叫び声が一斉に響き渡った。勝ち目など無い、それは一目みて解った。が、 リジアットは攻撃し続けた。おいらの頭の中は真っ白になってしまい、何をどうしていいのか一瞬解らなくなった。手当たり次第に攻撃する。それ以外にすべはなかった。メドレーソング?そんな余裕なんて無い無い。歌が解除されていることさえ気がつかないくらいだったよ。

 ポポ助(poposuke):Run away! withdraws once!
          (逃げろ! 一時撤退!)

 ワンバブルを切った段階でおいらはそう叫んだ。そして逃げた。が、奇跡はその時起こった。ドアを開け廊下に出た瞬間、ワンバブルを切ったおいらのHPが一瞬にしてMAXに戻ったんだ。そう、彼リジアットはパラディンだったんだ。一日に一度だけ起こせる奇跡(Lay on Hand)をおいらに使ったんだ。

 ツーバブルを切ったリジアットは後ろへと退き、MAXに戻ったおいらはモンスター共と向かい合った。本当は安全圏まで逃げたい心境だったけど、こういう状況で逃げられないのがポポ助なんだよね。

 危ないなら危ないで指示してくれれば解りやすいんだけど、無言のままだから彼の考えは皆目解らないかったよ。バードとは言え防御力はおいらのほうが勝っていたからね。盾(Tank)をおいらを選んだのは冷静な判断だったかも知れない。

 だが、いつ果てるとも知れない骸骨の群れに、MAXだったHPも残り少なくなってしまった。おいらは撤退を決意した、遅すぎる決断。そして逃げるには狭すぎる道。おいらのHPゲージが赤から紫に変わるにはそれほど時間はかからなかったよ。

 気がつくとおいらは、フリーポートの見慣れた景色をボーッと眺めていたんだ。


トラップ!ポポ助絶体絶命

 せめてもの救い、それはリジアットが死ななかったことかな。彼まで死んでしまったら、再び鍵から手に入れなければならなくなるからね。お陰でおいらはすぐにポポ助の死体と対面できたよ。

 でも本当言うと、おいら彼と手を切りたかったんだ。リジアット行動はあまりにも唐突で無理がありすぎる、そう思ったんだ。

 ポポ助:地下二階に行くならもっと仲間を集めなきゃ。

 おいらがそう言っても彼は何も言わなかった。「Follow me」彼はそう言い放った。断ることも時には必要なんだけれど、おいらには言えなかったよ。優柔不断な性格もさることながら、憶病者に見られたくないっていうのが本音だったかも知れないな。

 再度の進軍。さっきのフロアーよりも更に奧まで進むと、再びNPC達がワラワラと現れてきた。が、今回は他のソロプレーヤーたちのお陰で心理的にはかなり楽になれたよ。おいら達はNPCを一掃すると更に奧の部屋へと進んだんだ。

 その部屋の中央には巨大なオブジェがあって、イクサー(Iksar)って言う新種族を扱うプレーヤがキャンプしていたよ。そして地下二階の鍵を持ったお目当てのネクロマンサーNPCはオブジェの反対側にいた。

B2F_NECRO002 リジアットとソロのハンターが切りかかると、ネクロはさっそく魔法攻撃を始めた。ペットの骸骨がソロハンターを襲う。おいらと リジアットはネクロを狙ったよ。ネクロはあっけなく倒されて早々に リジアットが鍵をルートした。

 このへんの行動は本当に抜け目が無いと思うよ。しかも彼はルートした際の分配(/autosplit)を一切しないんだ。ね、パーティ向きじゃない性格がもろに出ているだろ。でもグループじゃない人のHealやbuffもしてあげたりもするから、悪い奴じゃなさそうなんだけどとても不可解な人物だよ。

 リジアットはその部屋の奥へと向かい、手に入れた地下二階の鍵を閉じられていた扉に使った。ギイィ・・・。きしむような音と共に扉が開く。



 わああああっ!

TRAP_B2F 一歩部屋の中に踏み出したおいらは叫び声を挙げた。なんと出入り付近にトラップが仕掛けてあったんだ。おいらは大きな落とし穴から、なんと地下三階へと転げ落ちてしまった。さ、最悪の事態。

 相棒リジアットはここの鍵を持っているのだろうか?もし三階の鍵を持っていなかったら脱出不可能ってことじゃん(涙)。続いてリジアットも落ちてきた。

 おいら達がその部屋を出るとアンデット達が回りに集まってきた。地下三階のアンデット。強さもさることながら、その圧倒的な数に勝負は戦う以前に決まっていたよ。

 気がつけばフリーポートの見慣れた景色。おいらは歌を書き移しながらすべての装備を失ったショックにしばし呆然としていたんだ。そしてリジアットと組んだことを今さらながらに後悔していた。


救世主ステルク

 ベファーレン(Befallen)へ戻ると最初のフロアーには数人のプレイヤーがたむろしていた。ハーフエルフ二人にダークエルフとイクサー(Iksar)そしておいらウッドエルフ。そして共通していたことはみんな無装備だってこと。そう、地下二階にキャンプっていた連中はみんな全滅していたんだね。

 相棒リジアットはハーフエルフの一人だった。装備がないから最初誰だか解らなかったよ。装備もなく鍵もない状態でおいらたちは為すすべもなく立ち尽くしていたんだ。時折現れるアンデットをみんなで倒すのだけれど、慣れないHand to Handに四苦八苦している有り様は情けないったらなかったよ。

 さあ、どうすればいいんだ。

 おいらは相棒の方を振り返った。が、彼は相変わらずポーカーフェイスでいた。かといって何か秘策があるわけでもなさそうだし・・・・・。暫くするとヒューマンの男が死体を担いでおいら達の前に現れた。そしてドスンとそれを放り出すとまた地下へと消えていった。

 ん、何だろ?おいらには事情がよく呑み込めなかった。が、また暫くするとその兄さんは、ふたたび死体を担いで舞い戻ってきた。兄さんの名前は ステルク(Stelck)、レベル41のドルイドだったよ。

 そうか、みんな彼に死体回収を頼んでいたのか!

stelck  ステルク(Stelck):他に取ってきて欲しいやつはいるかい?高レベルドルイドは回りを見渡して言った。

 ポポ助(poposuke):イェ〜イ!(おいら何て言ったらいいのか解らなくって、マクロ登録されたボタンを押して手を振ったんだ)

  ステルク:次は君のかい?じゃあ、consentしてくれよ。そうでなくっちゃ死体を回収出来ないからね。

 consent?はて、彼は何を言っているんだろう?

 おいらはその言葉を読みながら直感で(/consent Stelck)と入れてみた。consentコマンドを使うと、特定の人物に自分の死体を拾うことを許可することが出来ると、以前聞いたことがあったからだ。すると彼は地下に向かって走り出し、数分後にポポ助の屍が運ばれてきたよ。

 ポポ助:ありがとう、ステルク !本当に助かったよ。おいら自分の荷物からグレーターライトストーンを取りだして彼に差し出してお礼をしたんだ。

  ステルク:ははは、礼なんかいらないよ。

 彼は光る石を返してそう言った。おいら彼が救世主に見えてきたよ。他の連中も口にする言葉はThanks God、最上級の言葉ばかり。 ドルイド・ ステルク(Stelck)忘れられない恩人だよ。

 それから相棒のリジアットの死体回収も終り、おいらは彼に別れを告げた。これ以上のラッキーは訪れない、おいらはそう直感したからだ。彼につきあうのはもうご免だった。

 ポポ助:I have to log sorry.(ご免よ、もう行かなきゃ)

 リジアット:・・・・・・・。

 ポポ助:good hunting.(じゃあね)

 リジアット:・・・・・・・。

 孤独の聖戦士・リジアット。彼は最後まで寡黙な奴だったよ。

●Norrathを旅していると色々な人々と出会う。その場限りの人もいれば親しい友になる人も。さて、次回「ティーゴとの再会」はそんなお話だよ。


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